第二一六話 其々にとっての侍 前篇
「おうおう、大将閣下の酒が飲めねぇっていうのかぁ!」
絡むザムエルの顔を鷲掴みにして、ラムケが腹部に問答無用の慈悲なき膝蹴りを見舞う。
「いけませんなぁ。絡み酒とは言え、元帥閣下を相手にぃ為さるぅのはぁ!」
絡まれたトウカを余所に互いに絡み合い始めたザムエルとラムケ。
帝都空襲、ドラッヘンフェルス高地戦線、皇都擾乱。
三つの激戦の論功行賞が纏めて行われ、多くの者が昇進した。
ヴァレンシュタイン中将は、ドラッヘンフェルス高地周辺の遅滞防御に特段の功ありと判断。大将へ昇進。〈ドラッヘンフェルス軍集団〉司令官と装甲兵総監を兼務。
シュタイエルハウゼン中将は帝都空襲に於ける艦隊運用に功ありと判断。大将へ昇進。皇州同盟軍聨合艦隊司令長官に就任。皇州同盟軍所属の全水上部隊の指揮を掌握。
ノナカ大佐は昇進を固辞。代わりに将来的に戦略爆撃航空団の増強を要求。総司令部と参謀本部はそれを受理。六年後を目途に四個戦略爆撃航空団まで拡充の意向を公式表明。
ラムケ少将は昇進を固辞。若人の負うべき賞賛を奪うは老兵の行いに非ずとのこと。総司令部と参謀本部はそれを受理。感賞や報奨金も固辞したが、代わりに先代ヴェルテンベルク伯の管轄下にある蒸留所の経営権を請願。当代ヴェルテンベルク伯と協議の上で受理。
参加した将兵も数多くが昇進し、ヨエルに対する配慮でクレアなども昇進している。対照的にリシアは独断行動が目立った為に昇進は見送られた。
だが、最大の話題はトウカの元帥号授与であった。
皇州同盟軍という軍閥の設立者であるトウカが上級大将の階級に留まっていたのは一重にベルセリカへの配慮からであった。無論、北部に於ける著名な英雄と言える剣聖と同階級である事に対する配慮とも言える。
この場に集まったのはトウカにザムエル、ラムケにエップ、ノナカにリシアと言った面々である。口裏を合わせて集まった訳ではなく、当初はトウカとザムエルだけであったのだが、何処から聞きつけたのか次々と将官や佐官が集まってきた。
ザムエルは〈ドラッヘンフェルス軍集団〉司令官として総司令部が置かれるフェルゼンへと現状報告に訪れたという経緯があり、内情は戦力が足りんという愚痴をトウカが聞く為の酒宴であった。
義勇国民擲弾兵を基幹に後備兵力を練兵、正規軍と同等の能力を備えさせるには最低でも半年が必要で、戦車を含む諸兵科連合を前提とした育成ともなれば一年は欠かせない。士官の教育に関しては数年が必要とされる。
何よりフェルゼン自体の防衛戦力も欠かせない。
エルライン回廊からフェルゼン、ベルゲンの距離はほぼ同様だが、前者は広域に渡って深い樹海が広がりを見せている。その森林資源を求めて造られた側面も あるフェルゼンはシュットガルト湖と樹海という要害を周辺に持つ絶好の防禦地点であった。ベルゲンへと続く道を遮るように横たわるドラッヘンフェルス高地
とは規模が違う。特火点に加え、ヴェルテンベルク領邦軍猟兵が遊弋する樹海は全てが防御縦深に等しい。
突破は容易ではない。
内戦時の征伐軍はシュットガルト湖畔沿いを北上したからこそ可能であったが、南下する〈南部鎮定軍〉は樹海に加えてエルネシア連峰が遮る為、侵攻路は大きく制限される。
とは言え、戦力は必要である。
ザムエルの大将昇進は、皇州同盟軍内でも賛否両論があった。下士官や将兵からは絶大な人気と支持を誇るザムエルだが、高級将校を統率するだけの威を持ってはいない。人間種が並み居る高位種や中位種の高級将校を服従させるという事は、それ程に難事なのだ。
しかし、昇進は正しかったと、トウカは現在の遣り取りで確信する。
リシアの紫苑色の長髪を掴み「戦野の格闘戦の邪魔ぁ邪魔ぁ邪魔ぁ!」と叫ぶラムケを他所に、煤けた様にも見える軍装姿でトウカの横の|仕切り机(カウンタ―)へと滑り込むザムエル。
「酒守。アーダーシュバルツのオーヘンを」
空になった硝子杯を傾けたトウカ。ここで硝子杯内の氷がからりと音を響かせると見映えが良いが、トウカは直酌みで嗜む為に氷の姿はない。冷やされて香りが閉じる事を嫌うトウカは常に単純な飲み方であった。
「おぅおぅ、元帥閣下は年寄り臭い酒だな」
ばしばしとザムエルに背中を叩かれたトウカは、こうも知性と品性が乖離した人物が多いフェルゼンの起源となった女性を思い出して妙な諧謔味を覚えた。
組織人が統率者に近しい性格となる様に、領地の者は支配者の近しい性格となるのか。近代に至るまで貴族制度を維持し、尚且つ統治に対しても主導権を獲得 し続けた者達の影響力など比較対象がない。大日連の皇家とて権威を維持すれども、戦乱の時代ですら政戦への介入は数える程に過ぎなかった。
――まぁ、独逸には後の総統が宿泊した部屋の風呂の水を飲む者や、陰毛を送り付けたりする者もいそうたが……介抱されたい為に後の総統が搭乗した車へ身投げする者も居たか?
支持者と言うよりも、後の総統は彼の時代に於ける偶像であった。敬愛される暴君と言えたマリアベルとは方向性が違う。
「良く分からないな……」
ザムエルはトウカが驚く程に即断を希求する。
狂おしい程の短兵急なる意思は戦野に在って長所たり得る。
戦場の霧に惑いて決断を先延ばす様では指揮官足り得ない。
先に斯くあれかしと断じ、一切合切悉くを賭する。ザムエルは、それを言葉通りに成せる数少ない指揮官であった。トウカが躊躇する程に総てを賭する彼の決断は、直感に負いながらも大部分が成果を残している。
戦野に在って、是非に惑う戦況には恐怖が潜む。だが、その状況を無為に過ごせば戦野に在って重要な要素たる時間を浪費する。
故に戦士達は常に刹那の時を躊躇わない。
そうした男を、神州日之本では侍と称する。
そうであるならば、恐らく自身は侍足り得ないのだろうと、トウカは自嘲する。否、或いは戦略を行使する者と侍という要素は相反するものなのかも知れな い。総てを賭して望んだ第二次世界大戦(WWⅡ)への参戦は国家規模の切腹に他ならなかった。侍とは、その決断で戦術的に戦略を断じたものに他ならない。
トウカの独語に、酒の知識不足と見て取ったザムエルが薦めるウィシュケの酒瓶が次々と並ぶ中、トウカは最も泥炭の焚かれていない一本を選択する。
「面白い計画だ。先代ヴェルテンベルク伯の発想だな」
瀟洒な酒守の流麗な手つきが硝子杯にウィシュケを注ぐ様を横目に、トウカはザムエルへと言葉を投げ掛ける。
「御前なら隣家から料理酒を借りる気軽さで陸さんから兵を借りれんだろうよ」
酒守が注ぐウィシュケをもう一杯と、人差し指を立てたザムエル。
陸軍総司令部と隣家を同等に扱う無謀は別としても、戦力の遊兵化を防ぎ、兵力の機動的運用を行うという点には見るべきものがある。
「死んだ義母上様が戦車を望んだのは、素早く戦力投射できる自走式の特火点を求めたからだぜ。ヴェルテンベルク領邦軍出身者はよ、皆同じ発想をするだろうよ」
必要な時、必要な場所に戦力投射を行う。
ヴェルテンベルク領の国営鉄道よりも幅広の軌条から見ても分かる通り、領内への兵力展開は遙か以前より力が入れられていた。その上で、更なる戦力の機動的展開を意図した結果が戦車なのだ。
相手の準備が整う前に殴り付ける。或いは、相手の一点に戦力を迅速に集中して突破する。
トウカが提出した機動戦の理論ほどに大系化されてはいなかったが、マリアベルは感覚的に機動力が攻守の戦力乗数に加算される事を察していたと推測でき る。マリアベルが用意した戦力を扱う研究を重ねたヴェルテンベルク領邦軍の将校達は、ともすれば孤立を叫ばれる縦深に踏み込む事を躊躇しない理由はそこに
こそあった。ベルゲン強襲時の節々に見られた果断は彼らにとり決して突然のものではなかったのだ。
「優越した兵力の敵軍に対して機動力で補うって訳だ……まぁ、御前さんが航空攻撃の大規模化なんて選択肢を増やしちまったから、陸さんの戦闘教義の検討考察は大変だろうがよぉ」
酒守が澱みない動作で仕切り机に於いた硝子杯を手に取り、ザムエルはトウカへと掲げる。トウカも置かれた硝子杯を手に応じた。硝子杯は接触させない。薄く脆い硝子をぶつけ合う程にトウカもザムエルも酒に疎い訳ではない。
ウィシュケを口に含み、泥炭の噎せ返る様な刺激を舌先で転がす。トウカとしては満足だが、ザムエルの好みからは離れるのか首を傾げている。
「常に優勢な相手に殴り掛かる事を前提とする苦労は理解できる。まぁ、戦時下に八万輌の戦車を生産し、週刊空母をやらかす国家がないだけ恵まれているだろう」
太平洋を挟んだ先の物量主義者と相対する苦労は計り知れないものがあるが、それに加えて背後には同等の兵器生産を、人命を代償に実現した共産主義者も存在した。挙句に前者は未だ健在なのだ。それも中央集権著しい帝国主義に看板を掛け替えている。
「それ、明らかに兵器の湧き出る魔法の壺を持ってんだろ? うちの軍の戦車生産数は……」
「建設中の工廠が竣工しても年間五〇〇輌程度だな」
マリアベルも共通規格制定や簡略化に熱心であったが、未だ改良の余地は数多くある。そうした部分を突き詰める生産管理を専従とする部門は設立されたが、生粋の皇軍軍人と数字の奴隷たる学者の連携には今暫くの時間を要すると見られていた。
「だからこそ、戦友……いや、盟友の意見は貴重だ」
煙草を銜えたザムエルに点火機を差し出したトウカ。
現状のフェルゼンに展開している皇州同盟軍の戦力の大部分を〈ドラッヘンフェルス軍集団〉に編入し、フェルゼン防衛の際はシュットガルト運河を通して大 星洋上から輸送船団でフェルゼンに戦力を揚陸させればいいとのザムエルの意見は傾聴に値するものがある。原案が、内戦時にザムエル隷下の装甲部隊を征伐軍
後背に迂回させたるべく、シュットガルト湖上での奇襲揚陸であるのは明白。ザムエルは軽薄で伝統や先例を軽視する様に見えるが、実際は常に伝統や先例を尊 重している。
現状でヴェルテンベルク領に展開している部隊は練度不足の部隊ばかりであるが、合計すると六万名を超える。シュットガルト運河周辺にも四万名近くは分散配置されていた。犠牲を覚悟の上で確実な遅滞防御を行うとなれば、ザムエルの提案を可能とするだけの戦力は存在する。
しかし、白き女帝がそれを赦すだろうか?
トウカは漠然とした不安を覚えた。侍の如く断じて賭するべきかとの思惑が過ぎるが、トウカはやはり戦略家であった。大規模な海上護衛の困難を理解している。無論、陸軍に寒冷地装備の交代部隊を短時間で用意できるのかという不確定要素もあった。
「……難しいな。今一度、海軍に攻勢を求めれば、海上輸送は可能だろうが、陸軍の都合が付かないだろう。連邦や中原諸国の国境も最近は活動が活発化していると聞く」
人道的見地に基づいた保護活動などという屁理屈で勝ち馬に乗ろうとしているのは明白だ、とは言い切り難いものがある。帝国との折衝で皇国の戦力分散に協力することに承諾したという可能性も捨て切れない。
トウカは、エカテリーナに対する警戒を解いてはいなかった。
敵というのは独立していて相互関連的であり、少なくともまだ我々が操作できていない存在である、ということになる。そして我々が戦う理由は、まさにこの操作を確保することにあるのだ。
彼女を操作するのは難しい。よって永遠の敵と言える。勝利条件は殺害。或いは、文字通り首輪を付けて飼うしかない。
未だエカテリーナは講和や撤退よりも戦時体制を維持し続ける事に利益があると見ているのは、帝国の対応から一目瞭然である。エルライン回廊を介して皇国 に戦力投射を続けるべく、帝国各地から抽出した部隊が鉄道輸送されつつあるとの報告は、トウカにも上がってきていた。低練度の部隊や徴兵されて間もない集 成部隊に過ぎないが、数も数となれば油断できない。
しかし、本当にそれだけだろうか?
限定空間であるエルライン回廊を突破し、兵力の優位を遺憾なく発揮できる状況を最大化するという方針は正しくもあり堅実でもある。
故に、エカテリーナの一手とは思い難い。
勝ち切れず泥沼化の戦況が続く可能性を無視している。何処かで彼女が利益とする軍事行動が行われるはずであった。それこそが本命である。
「ま、御前さんがそう言うならそうなんだろうよぉ」自らの意見を忽ちに取り下げたザムエル。
即決即断。騎士でありながら実に侍らしい感性の持ち主と言える。
「もう少し自分で考えて貰いたいものだが」
「莫迦を言え。こういうのは一番できる奴に丸投げするもんだろ?」
割り切りと言えば聞こえはいいが、大将の階級を得てそれでは問題とも言える。しかし、トウカが居なければ、ザムエルは自ら考えた結果を持って行動するだ ろう。彼は彼に根差した軍事思想の下で動いている。それにはある種の効率性があった。甚だ他人の存在を前提としたものであるが。
「ただ、海上輸送を餌に帝国海軍を誘き寄せるのは有効だろう。欺瞞作戦で帝国軍の意識を分散するべきだ」
「お、嫌がらせか? 嫌がらせか?」目を輝かせてウィシュケを一息に飲み干すザムエル。
人間性が滲み出る表情だが、嬉々としてヒトが厭う行為を率先して行うのは、先代ヴェルテンベルク伯マリアベルの人間性に倣った者が多い為である。ヴェルテンベルク領邦軍出身者は、不正規戦が得意な者が多い。それがマリアベルの資質と嗜好、趣味に依って立つところであるのは疑いない。
――侍だからこそ勝利の為に手段は選ばないか。
戦闘階級たる侍は本来、勝利の為に悉くを擲てる者を指す。
闘争こそを存在意義とする者にとり、安寧や日常とは唾棄すべき時勢なのかも知れない。
動乱を望み、乱世を愛し、当世に挑む生き物。それを神州日本では侍と呼び習わす。
「御前は本当に侍だな」
「おいおい、神州国でもあるまいし。俺は騎士らしいぜ? まぁ、士族なんて俸給も大して増えねぇから辞めてもいいんだがよ」
侍は侍らしくあろうとはしない。ただ、戦場で輝くに過ぎないのだ。その性格は判断の対象にはない。必要な時節に断固として戦う者に過ぎない。元来、そうであったのだ。主君の為、御国の為などという理屈は周囲の後付にして方便に過ぎない。
神州国には侍という戦闘階級が存在するが、その点を踏まえると在りし日の日本より漂着した侍が存在する可能性を捨て切れない。神州国自体が、トウカから見て酷く既視感のある伝統や仕来り、作法や風習の影が見受けられる。皇国と同等に近い命数を刻む伝統ある国であり、恐らくは皇国の各所に芽吹いた郷愁の起源は神州国を経由したものであろう事は疑いない。
――その侍共が敵になるかも知れん、か。因果だな。
島津家の様な侍が居ない事を、トウカは願う。劣勢が前提の闘争を日常的に行う連中は、常に碌でもない戦争をする。
「御前は乱世姦雄の男だからな。騎士とは程遠いか」
「紅顔の至りだな。皇国随一の装甲部隊指揮官に評価されるのは」
ザムエルの“称賛”に、トウカは相好を崩す。
乱世で名声の為に悪知恵を働かせるという……当代無双の戦略家という評価をトウカは半ば皮肉と嫌味を以て受け入れた。
他愛のない会話。
後年、乱世姦雄と皇国随一の装甲部隊指揮官という評価はその是非を巡って大いに歴史家達の議論を呼ぶが、当人達にとりそれは予想外の事であった。名言や伝承とは何気ない言動や行動から生じるのだ。そして、眼前でにこやかに微笑む老齢の酒守は語らない。余人にとっては、その程度に過ぎないのだ。
「そう言やぁ、二階からは神州桜華が見えるらしいぜ」突然に話題を変えたザムエル。
妙ないかがわしさに眉を顰めたが、平素よりいかがわしい人物と評して差し支えないなザムエルであればこそ追及しようという気概は起きない。
ラムケが手にした蒸留酒で、リシアに酒精による嫌がらせを敢行している姿を一瞥し、トウカは喧騒から逃れるべきかと席を立つ。
手を振るザムエルを尻目に、トウカは追い出されたのか押し遣られたのかと軍帽を手にした手で頭を掻く。
――陣地転換と思えばいいか。
一層と喧騒の度合いを増しつつある将校達を背に階段を上るトウカは、思考を放棄する。
酒精に思考が犯されたというには 飲酒量は然したるものではないが、酒宴の始まりから機会を窺っていたであろう視線と仕草と視線が目立つザムエルの思惑を知りたいという部分もあった。或い は、トウカに追随しようとするリシアを戦線離脱に追い込みつつあるラムケも一枚噛んでいる可能性があった。
トウカは二階建ての木造建築物としては酷く華美な造りの階段を上り切った。
「はぁ……私は混合酒しか飲みませんが……」
クレアの好みは大凡の予想に反して混合酒であった。
清楚可憐な容姿だけを見れば混合酒という組み合わせは酷く自然なもので、斯くあるべしという女性が酒を嗜む姿を見せている。クレアとアヤヒ以外の客が居ない為、クレアの姿に気を取られる者はいない。
淡い桜色をした衣裳を纏ったクレアは、左で纏めていた浅葱色の髪を現在は下している。大きく肩の開いた衣裳は人魚型の足元をしており、彼女の清純でありながらも瀟洒な佇まいを際立たせていた。
憲兵総監として苛烈無比な指揮で知られるクレアは、日常生活でも軍装である為、現在の姿を以て憲兵総監であると確信できる者は少ない筈であった。顔立ちは穏やかでありながらも苛烈な言動と行動で知られるクレアは、印象に引き摺られた色眼鏡で見られる事が常である。
淡い紅を引いた唇を震わせる。
「私にこの様な服は似合いませんから……」
軍入隊後は私服すら殆ど購入していなかったクレアは、女性の皇国軍人の中でも徹底した軍人である。
皇国軍人の女性は私服を殆ど持たない者が少なくない。全国的に軍人に対する様々な割引が各分野である以上、自らが軍人であるとこれ以上ない程に示す事の できる軍装を日常的に纏う者は男女問わず少なくない。食事や買い物を行えば、何故か知らぬ割引が有効で支払額が目減りしているなどという例も少なくはな
い。それ故に軍人同士で恋人の場合、軍装のままで逢引きをしている姿なども散見される。
衣裳姿のクレアに対し、アヤヒは漆黒の皇州同盟軍第一種軍装を纏っている。
官給型ではなく、上衣の腰部や軍袴の足回りが引き締められている特注の軍装であった。全体的に細身に見える様に配慮された造りであり、アヤヒの高身長も相まって男装の麗人といった佇まいである。佐官の俸給であればこそ叶う特注軍装であるが、アヤヒは軍帽まで鞍型で統一しており、隣に立てば身長が際立つ。
護衛として存在感を示すには申し分ないが、衣裳姿で隣に立つにはそうした趣味を疑われることを覚悟せねばならないい相手と言える。
「上官を辱めて楽しいですか?」恨めし気なクレア。「上官としての威厳が……」
アヤヒは香草を漬け込んだ蒸留酒であるシュタルムヘーガーを少しずつ口に含んで味わいと鼻を抜ける香草の風味に身を任せている。表情は酒を嗜む男装の麗 人ではなく、違法薬物を吸引するかの様な安らぎの表情に座席の間を開けたくなるクレアだが、無慈悲な事に座席は固定式で移動はできない。
「ああ、楽しいわ。本当に楽しい……」心からの声音のアヤヒ。
上官を着飾らせて連れ回すのは楽しいらしいと、クレアは柳眉を僅かに歪ませた。
彼女には彼女の思惑がある様子であるが、今のクレアには分からない。クレアを心配してという額面通りの言葉を信じてはいなかった。
情報部の紐付きであるアヤヒだが付き合いは長い。信用はできるが信頼できないという立場として扱ってはいるが、彼女自身は情に厚い人物である。大凡、監視役としては向かない性格をしており、クレアは初対面で訝しんだ。
しかし、だからこそアヤヒが抜擢されたのだ。
相手の警戒を解く自然体。それでいて、必要な時、必要な場面で私情ではなく軍務を優先できるナニカを持っている。ある意味、最も監視役には向いた人選と 言えた。無論、度重なる政戦での混乱で癒着を懸念した人事異動が行われていないのは、クレアに対する懸念への優先順位がヴェルテンベルク領邦軍司令部にと
り高いものではなかった事を示している。クレアは当時、自らが信用されている事に安堵したが、今となってはもう一つの可能性がある。
アヤヒはヨエルからの差し金でもあるのかも知れない。
マリアベルとヨエル。
今となっては不明であるが、二人の連携があった可能性をクレアは捨て切れないでいた。トウカもその辺りを懸念している節がある。皇都からフェルゼンへ帰 還後、トウカはマリアベルに近しい人物に対する調査を情報部に命じていた。無論、尻尾を掴めるとは考え難いが、相手の情報収集を阻害するという意味合いが 大きいのは間違いない。
「こういう時は飲めばいいの。面倒くさい憲兵総監ね」
心底と呆れたという声音のアヤヒが、残りのシュタルムヘーガーを一息に飲み干して立ち上がる。並んだ硝子杯は六つ。結構な量と言えたが、アヤヒの所作に乱れはない。
「どちらに?」クレアの問い掛けに「私、野暮じゃないの」とアヤヒは満面の笑みを零す。
座席に掛けた外套を手に取り、アヤヒが敬礼する。
「ま、感謝して下さって結構ですよ」軍装を翻して遠ざかる副官。
そこでクレアは背後の気配に気付いた。
アヤヒの態度と思惑に気を取られて気配に気付かなかった為であるが、クレアは元より戦闘に秀でた種族ではない。気配などという微かなものを準備もなく気取る事は難しく、驚く事は不思議な事ではない。
それが軍神であれば尚更である。
「ハイドリヒ少将。貴官も酒を嗜むのだな」
憲兵は外で飲酒する事を避けると思っていた、とトウカが隣の座席に腰を下ろす。
座席を開けて座られる程の隔意がなかった事に安堵すべきか、或いはトウカも社会人として配慮ができる人物であったのかと驚くべきか迷うクレアを尻目に、トウカは酒守からお絞りを受け取る。
ごしごしとお絞りで顔を拭いたトウカは、泥炭を焚いたウィシュケの銘柄を指差す。若くしてウィシュケを好む者はヴェルテンベルクでも多くはないが、それ故に酒守は僅かに頬を綻ばせる。酒場で妙齢の人物が酒守をしている場合、その人物は最もウィシュケを愛飲している場合が多い。
若くして趣味の合う人物を歓迎するのは老人の性である。
トウカは「貴方も好きなものを」と告げ、酒守はトウカと同じ銘柄を手に取る。酒類だけでなく銘柄まで合う様子であった。否、共通の話題を求めたのか。
「貴官の行きつけか?」
「いえ、副官がご迷惑を掛けている様ですが……」
酒守に視線を向けようとするが、後は若い者だけでと言わんばかりに距離を置いている。男女が席を連ねて座している中で口を挟む不見識は持ち合わせていないと言わんばばかりの姿勢だが、飲食業界に属する者としては正しい感性と言えた。
ノルンヴァルト樹を切り出した仕切り机は継ぎ目がなく、相当の樹齢である事が窺えるが、視線を落としても尚、磨き上げられているが故に視線を逃がす事もできない。
結論として正面を向くしかない。
これでは離れた席に座られた方が良かったと、クレアは緊張する。
「美しいな」
「???」クレアは首を傾げた。
まさか自身に対しての言葉ではなかろうとは、クレアにも理解できる。トウカは意味もなく女性の容姿を賞賛する程に女誑しではない。クレアも際立った容姿 をしているが、トウカの周囲にはミユキやベルセリカなどの高位種が寄り添っている。自身が容姿のみを以て近しい位置を得られるとは思い難いと、クレアは確 信していた。
実際のところ、クレアの容姿はミユキやベルセリカとは違った妖精種由来の清楚可憐なものがある。一般的な感性としては、ミユキやベルセリカよりも人目を引くだけの要素を容姿に幾つも備えていた。
トウカが窓越しに視線を向ける先……川沿いには桜並木がある。
「あの桜だ。神州桜華と言ったか? 大したものだ」
神州国の国花でもある神州桜華の大木に感嘆の声を漏らすトウカ。
クレアは同意の言葉を漏らすが、胸中では桜という木に対してある種の畏怖を感じていた。桜とは単なる花木としての範疇を超えた多くの要素をヒトが与えた存在である。
桜は多くのヒトを魅せるが故に畏怖すべき華と言える。
斯くも清楚に咲き誇り、斯くも可憐に散り往く華は古今東西を見ても桜以外に存在し得ない。
散る為に咲き誇るが如き印象を受ける華ゆえに、ヒトはその散り際に魅せられる。
その有り様を目にし、刹那に命を賭する烈士達は想うのだ。
自身も斯く散りたいと。
そして、トウカにもそうした片鱗は見受けられる。
帝都空襲ですら自身の生命を天秤に掛けた上での費用対効果であるがゆえにそう考える者は少ないが、クレアはそうは考えていない。
彼はどこまでも神州国成立時の侍の理念に忠実である。
目的の為に断じて争う。
禁忌も忌避も常識も正論も……あらゆるモノを踏み躙り戦う。
ヨエルの語ったサクラギの印象は正にそれであった。
戦争を政治の延長線上にあると捉える者は多いが、サクラギに限っては違う。戦争を根幹とした振る舞うのだ。政治すら戦争に従属させ、知識や技術、国費、資源、国民すらも、総てが戦争の為に用意された要素であるかのように振る舞う。
軍事的才覚などという……軍神という表現は生温い。彼の戦略は神威に等しい力を有している。
クレアは戦慄を隠せないでいたし、多くの将官達が自らの矜持や権威を以ってトウカと相対する事を避けたのは、正に彼の神威とでも言うべきものを畏れたのだ。そうでなくては、マリアベルの死後、北部統合軍は皇州同盟軍として健軍する事はなく、何より停戦協定を纏め上げる事すら叶わなかったに違いない。
巷で言われる英雄や軍人が叫ぶ軍神という枠に収まらない絶対的な強制力を伴った実力を以ってトウカは北部に君臨した。
そんなトウカだからこそ、当初のクレアは畏れた。排除すべきだとも考えたが、友人に諭され、最終的には魅入られた。
熱に浮かされた視線の先……神威を纏うトウカに、徐々に惹かれたクレア。確たる理由があるという訳ではなく、彼の挙動の一つ一つが彼女を酷く惑わせたのだ。争いを統率している時の彼は酷く魅力的であった。
クレアは、短式混合酒の残りを飲み干す。
「閣下は華を好まれるのですか?」
「美しいモノには惹かれる。無論、機能美も同様だとも。特に兵器はな」トウカは昏い笑みを零す。
戦艦〈剣聖ヴァルトハイム〉に座乗した際、頻りに艦内を“巡視”していたのは、そうした部分もあるのかも知れない。男という生き物は良くも悪くも大きなものに惹かれる傾向がある。巨大であるということは、それ相応の合理性がなくば成立しない。
クレアが手振りで同じ混合酒を新たに注文し、再び口を開こうとする。
しかし、それは慌ただしく階段を駆け上がる足音に遮られる。
「閣下、こちらに居られましたか! 緊急の通信文です!」
参謀本部首席参謀であるアルバーエルが息を切らせて、トウカへと詰め寄る。トウカは眉寄せて通信文を受け取った。
余程に慌ててきたと思しきアルバーエルだが、伝令を走らせるのではなく自ら訪れたのは、それ程に緊急を要する事であるのは疑いない。
そして、それはクレアの情報網が劣る部分からの情報であるのは疑いない。クレアの場合、緊急の報は結晶端末によって伝達されるが、そちらよりも迅速であるならば国外情報である可能性が高い。
「……そちらを狙ったか。弱点を食い破るのは定石だが…………陽動だな」
トウカは興味を失った通信文を、クレアへと差し出す。
アルバーエルに視線で憲兵への開示で問題が生じないが問うて問題ない事を確認し、クレアは伝令文を読む。
「これは……流石にこの動きは……この様なことが……」上手く言葉にできないクレア。
アルバーエルが「どうなさいますか?」と問うが、トウカは肩を竦めるに留める。
「連合王国による共和国への宣戦布告なんて……」
呆然としたクレアもまたトウカへと視線を向ける。
対するトウカは、飲み干したウィシュケを追加注文しつつ、アルバーエルに口を付けていない飲料水を薦める。
「捨て置け。どちらにせよ、我々にできる事などない」
美味しそうに飲料水で喉を潤すアルバーエルを尻目に、トウカは端的に放置を命じる。
クレアも新たに手に取った混合酒を口に運び、それしかないとトウカの言葉に胸中で追従する。
連合王国……正式名称を《ヴィンサー連合王国》。
《ディクシオ王国》を主体とする王権主義国家の連合体である。《ヴァミリウス王権同盟》に対抗する形で成立した国家であり、大多数が《ディクシオ王国》 の属国から構成されることから、政戦は事実上、《ディクシオ王国》によって取り仕切られている。現在は政体的に近しい《ヴァミリウス王権同盟》と軍事同盟 の関係にあり、《ローラン共和国》や《アトラス協商国》とは停戦中である。
封権的な国家であることから、政治と軍事、経済も保守的な姿勢が多分に見られるものの、中央集権体制の堅持を成功させている点は侮れない。典型的な専制君主制のままに近代化に対応した国家でもあり、独裁制の国家が政体を其の儘に近代化する典型として、アトランティス大陸内外で評価する向きもある。
高度な統制による政治体制の維持と、計画経済政策による安定的な成長率を実現した国家であるが、同時に近代化によって平民に常に配慮せねばならない情勢から、“民主的君主制”と揶揄される事もある。
専制君主制という個人の資質に依存した政体である点は皇国と近しいものがある。激動の民主議会政治の潮流が姿を見せる僅か前、類い稀なる名君の到来により雄飛した国家であるが、軍事力の面では突出したものがある訳ではない。
「一国家の一軍閥に過ぎない我々にできる事など元よりない」
「しかし、共和国戦線の瓦解は暫しの間を置いて此方の戦線へと影響が生じ始めるかと」アルバーエルの主張。
「莫迦を言え。それまでには決着が付くだろうし、そもそも主目的はそこではない」トウカが鼻で笑う。
クレアは、皇国が連合王国と国境を面していないという点も大きいと胸中で勘案する。
連合王国は共和国とは国境を面しているが、皇国や帝国とは国境を面していない。挟撃は可能であるが、地政学的に見て連携に関しては優位という訳ではな かった。帝国と連合王国の物資輸送や戦力供給は、国境を面していない事から大きく迂回しての海上供給が基本となる。故に多大な時間を要する事は疑いない。
以前より帝国が連合王国などに技術移転しているというのは公然の事実であったが、参戦要請まで取り付けたとなると、相応の打算に基づいたものである事は疑いない。
事前に大攻勢の時期を教え、応じる形での侵攻であるのは間違いない。
合意形成などを含む準備期間を踏まえると、以前よりそうした計画があった点を利用してと予想できるが、エカテリーナの目的は共和国の戦線押上げや打倒、停戦ではない。
「しかし、陽動とは一体どちらでしょうか? 我々に対するものとは考え難いですが……」クレアは思案する。
《ヴァミリウス王権同盟》や《アトラス協商国》とは停戦中であり、両国共に本土決戦ともなれば圧倒し難いだけの戦力と装備を有している。共和国方面での揺動を踏まえた上での残存戦力で短期間の打倒が叶う程に脆弱ではない。
「誰も彼もが大前提を忘れているな」トウカは、ウィシュケを煽る。
「奴らは食糧不足に喘いで南下してきた。それが答えだ。餌が手に入れば、取り敢えずは当座を凌げる。……俺もそちらは考慮していなかったが」
トウカは容易く己の思惑を敵が上回ったと認める。
白き女帝、エカテリーナ。
紛れもなくトウカと同等の指し手である。
トウカとエカテリーナは、クレアの及びも付かない視野で戦争を繰り広げている。二人が複数の陣営を操る事で大陸覇権抗争を成しているという事実は、クレアの心胆を寒からしめたが、同時に何故か頬が熱を帯びる。
「金だ。金で餌を買えばいい。金の為に襲うのだ。挟撃はそれを邪魔させぬ手段に過ぎん」
「……つまり中原を襲撃するという事ですね?」
資金さえあれば食糧調達は可能である。故に穀倉地帯ではなく大規模な金融地域の領有を狙ったのだ。
《中原諸国領》
三二の国家の集合体にして、《ヴァリスヘイム皇国》、《ローラン共和国》、《スヴァルーシ統一帝国》というアトランティス大陸でも定評のある強国の狭間 に在る為、それらの国家の国境に近い小国は、それに近い立場と意見であることが多い。係争関係にある大国の狭間にある為、大陸随一の金融地帯にして交流地
点でもある。それ故に三角貿易の中継地点としても名を馳せている。《スヴァルーシ統一帝国》と《ローラン共和国》の係争地であり、《ヴァリスヘイム皇国》 も政治的均衡を意図し、熾烈な外交戦と諜報戦が《中原諸国領》では行われている。
軍事力に乏しいが、国民総出で傭兵産業に肩入れしている《ランカスター王国》などもある為、質的には一部が周辺諸国に比肩し得る場合がある。
しかし、公称の人口は三二国家合計で一二〇〇万……しかし、実情は四〇〇万を切ると見られている。総動員体制を実現しても抵抗の程は知れている。
「総てを奪うだろうな。金銭も資源もヒトもだ」トウカは肩を震わせる。
彼は嗤っている! 新たな地獄の出現を!
帝国が全てを奪うという事は文字通りの根こそぎである。金銭は勿論、公共施設などの構造物を構成する鋼鉄なども剥ぎ取りに掛かっても不思議ではない。街中では手当たり次第に家屋に押し入り金品を収奪するだろう。そして何より、ヒトすらも奴隷として連れ去るに違いなかった。
帝国は奴隷産業が盛んな国家である。皇国では禁止されているが、帝国では占領地の住民を安価な労働力などに利用する為、積極的に“鹵獲”している。その 末路は無惨に過ぎる。元より帝国の侵攻を受けたというだけで都市は廃墟となり、強姦された遺体が道路に転がり、抵抗者の末路を示す為に広場には遺体が積み 上げられる。
それは最早、戦争ですらない。
国力に勝る帝国が周辺諸国に勝ち切れない例があるのは、それを理解しているが故に徹底的な抵抗を周辺諸国が選択しているからである。併合された国家には、抵抗の末に総人口の八割を喪って崩壊した例すら存在する。
「案外、開き直って奴隷を食肉加工にでもする心算かも知れんな」
トウカはつまみとして出された干し肉を咥える。
その一言に総毛立つ感覚を覚えたクレアだが、トウカは「共産主義が幅を利かせる前にそれをやらかすなら愉快じゃないか」と干し肉を噛み切って見せる。そこには僅かな喜悦と焦燥が滲む。
「カチューシャめ、やってくれる」
半分以上、残ったウィシュケの香りを楽しみ、トウカは称賛を以って含み笑いを漏らす。憚ることなき無邪気な笑声が周囲を満たす。
彼にとり帝都空襲による優位は、今この時、崩れ去ったのかも知れない。軍神と白き女帝の争いの中、薪に焼べられるかの様に人命は消費され、叙事詩の如き逸話が次々と生まれる。血塗れの手、鮮血の洋墨で記される歴史書は後世の歴史家を酷く喜ばせるだろう。
「一瞬、焼くべきかとも思ったがな。陣営として未だ独立したものと受け取られている国家を焼くのは拙い。中原諸には悲劇の主人公になって貰うとしよう」
トウカは眼前の窓を通して咲き誇る神州桜華へ硝子杯を掲げる。
それは、死者の為か己が野心の為か。
憲兵は訊ねる勇気がなかった。
しかし、彼が続くに値するだけの実力を備えている点だけは痛い程に理解できた。
嗚咽が漏れる事を怖れ、クレアも神州桜華を一心に見据える。
涙など出はしない。
彼を知りたいと考えた。知っても尚、彼を畏れはしないと根拠なき確信を抱いていた。
そうした恋心が知った現実は、まるで予想すらし得ない運命の悲劇的な浪費が成される世界だった。
敵というのは独立していて相互関連的であり、少なくともまだ我々が操作できていない存在である、ということになる。そして我々が戦う理由は、まさにこの操作を確保することにあるのだ。
《大英帝国》 国際政治学者 コリン・S・グレイ