アトランティス大陸地政学
《皇国》
政体……“皇権神授に依る極めて皇王の権限が強い立憲君主制”
《皇国》は、皇権神授を骨子とした君主制と、貴族院と衆議院からなる両院制議会を併用した政治体制を取っている。一見すると《王国》の立憲君主制と酷似 した政治体制でもあるが、皇王の権限がそれよりも大きいことに加え、実在する天霊の神々という高位存在によって選出される皇王という二点が大きな相違点で あった。
そして、それらとはまた別に枢密院と呼ばれる組織が存在する。
枢密院は皇王の諮詢を受けて重要な国務を審議する機関である。しかし、皇王不在の状況下で、先皇時代の思想に固執する老害と成り果てていた。枢密院は、 基本的に行政への関与を禁止されていたが、時折、政府に干渉しており、事実上の拒否権を有していると言っても過言ではない。
アトランティス大陸で最も命脈の長い国家であり、皇権と議会政治の併用であることから、《帝国》を除く専制独裁制国家と民主共和制国家の双方と極めて友好的な関係にある。
皇権神授に依る極めて皇王の権限が強い立憲君主制という独自の国家体制を形成し、強大な種族を主体とした人間種とは一線を画す精神性の下に統治される国 家で、多種族国家にして多民族国家。常備軍の総兵力で周辺諸国に劣るものの、魔導技術全般と一部科学技術に於いて極めて先進的な部分があり、そのことから
兵器体系に於ける技術躍進が他国よりも優れている。質に於いてはアトランティス大陸随一と言える。
北部は、各種魔導資源の一大産出地として世界的に有名で、南部は大陸有数の穀倉地帯として周辺諸国に対する食糧供給を担っている。
人口、約8600万
首都、《皇都、ヴェルクハイム・ハウプトシュタット》
《帝国》
政体……“帝王による専制独裁制”
アトランティス大陸最大の人口と国土を誇る国家。
極めて強権的な政治体制と国内の強固な統制から、周辺諸国との軋轢を生じながらもアトランティス大陸で周辺諸国を圧倒的な軍事力で睥睨している。国内は 所領を持つ貴族によって運営されているが、度重なる拡大政策と広大な国土に国内整備が追い付いていない状況で、叛乱と一揆の危険性を孕んでいる。
人間種を主体とした国家で、他種族に対しては一部を除いて極めて排他的であり、敵対的な政策を執っており、《皇国》とは幾度も干戈を交えている。
国内世論を押さえ付け、食糧の確保を目的とした南下政策を国家方針としており、《皇国》や《共和国》、《王権同盟》、《協商国》、《列衆国》、《立憲王国》などと軍事衝突を繰り返している。
比較的、鉄鋼資源に恵まれているものの、寒冷気候であることから食糧生産に国土が向かず、毎年、辺境では餓死者を出しているが、南部地域……旧《エカテ リンブルク王国》周辺は夏期となるとある程度の収穫を見込める。現在は穀倉地帯とするべく、大規模な入植が行われている。
常備軍は一四〇〇万を越え、アトランティス大陸最大の動員兵力を誇るが、全軍への最新兵器の配備が間に合わず、一部地域では屯田兵となっている兵士も少 なくない。しかし、近年は《ザルツブルグ》などの工業都市の重工業化が急速に進みつつあり、兵器生産性が向上しつつある。特に砲兵の育成に力を入れてお
り、絶大な砲兵火力の支援を受けた大兵力の歩兵による突撃は周辺諸国にとって恐怖の象徴と言える。
人口、四億六〇〇〇万
首都、《帝都、イヴァングラード》
《共和国》
政体……“民主共和制”
大統領制と連邦制、厳格な権力分立を有した憲法と法律によって統制された民主国家であるが、近年は《帝国》の軍事攻勢に対して劣勢に成りつつある為、元首であり、行政府の最高指導者でもある大統領の権限が増大しつつある。
多民族、多種族による平等主義を提唱しているが、寿命の差からくる所得格差や資産の偏りに対する不満を持つ低位種を主体とする低所得者の反発と隔意があることから、中位種や高位種の大多数は、発展期に《皇国》へと亡命している。
あらゆる分野で安定した政策を実施し、権力者の思想に偏りがちな国家運営ではないが、議会での衝突から意見が纏まらず、大々的な動きに移行するまでに非常に時間が掛かる。この為、《帝国》の軍事攻勢に対しても後手に回ることが少なくない。
隣国の《王権同盟》や《連合王国》とは険悪な関係であるが、《協商国》とは軍事同盟を締結している。無論、《王権同盟》も《帝国》の脅威に晒されている為、軍事衝突は小規模に留まることが多い。
人口、九二〇〇万
首都、《エルスセーナ》
《神国》
政体……“総攬者たる神王指導の下の立憲君主制”
大神洋に浮かぶ海洋国家として、周辺海域を絶大な海軍力で睥睨している島国。
四つの大島と無数の島嶼からなる国土を持ち、領海規模も非常に大きなものとなっている。海洋国家である事から海運業に強く、周辺諸国と他大陸を繋ぐ海運 の要衝として発展した経緯があり、近年は停滞しつつあるが経済活動も比較的活発である。シーレーンを護る為に有力な海軍戦力を保有し、その総数は周辺諸国
の海軍を一国で同時に相手取れるほどの規模を持つ。海軍の統帥権は神王が有するが、陸軍は各藩主に指揮権があり、事実上の派閥を各地で形成している。
四季があり、《皇国》の初代皇王所縁の国家との類似性がみられることから、《皇国》との関係は長いが、海洋権益を巡って幾度か海戦が行われたこともあ る。旧式を含めると戦艦だけで一〇〇隻を越える為、他大陸からの干渉の抑止力としての側面も持っており、《エルゼンギア正統教国》や《ローラシア憲章同 盟》に対する一定の発言力を持つ。
国内には固有の魔獣……妖魔が存在し、それを討伐する為に古来より陰陽師という魔導士が存在する。神王家の血縁は、総じて高い魔導資質を有しており陰陽術式に対する造詣が深いことが多い。
人口、約五一〇〇万
首都《征京》
《部族連邦》
政体……“各部族による合議制”
人種と種族の坩堝と称される連邦国家。
周辺諸国と比較すると国土の規模と比して膨大な人口を擁する国家であり、種族や民訴区毎に勢力を形成して、独自の軍や法を整備している。連邦国家であるものの、各勢力の独自性が強く、中央政府の権力は限定的であり、国内の意思統一や統制に時間と労力は必要となる。
経済的格差から各勢力は軍事力を伴った小競り合いが年間を通して行っており、積極的な外征や侵略行為は控えられている。武官や文官、国民の目は国内に向 いており、連邦自体が一つの国家ではなく小国の連帯に近い。それらの理由から国境を面する《共和国》や《連合王国》との国境争いでは常に劣勢を強いられて
いるが、国内に少なからず高位種がいることから、武勇に秀でた将兵がおり、小康状態を維持している。同じく国境を面している《ロマーナ王国》とは不可侵条 約を締結しており、友好関係にある。
種族的、民族的に寛容な体制を執り、尚且つ、国内に無数の種族と民族がいる《皇国》や《島嶼連合》とは友好的な関係にあり、経済的に深い交流がある。
人口、約一億五〇〇〇万
首都 《シルヴェストル》
《南北エスタンジア》
政体……南エスタンジア社会主義連邦……“国家社会主義”
北エスタンジア王国………………“絶対王政”
《皇国》と《帝国》の狭間にあるエスタンジア地方一体に国土を持つ国家。本来は《南エスタンジア社会主義連邦》と《北エスタンジア王国》という二国に分 裂した分断国家であるが、双方共に国土も小さく経済規模もそれに応じた者でしかない為、一纏めに《南北エスタンジア》と呼称されることが多い。
国土は峻険な山岳地帯が大半を占め、そのことから周辺諸国から仮想敵国とされることもなく存続してきた《エスタンジア王国》が、近年、発生した社会主義 革命によって《南エスタンジア社会主義連邦》と《北エスタンジア王国》に分裂した。大方の予想では社会主義勢力が一掃されるはずであったが、突然現れた男
性指導者の狂信的な扇動能力によって大方の予想を覆す。そして、《帝国》と《皇国》にとって、地政学的には侵攻路となり得る為に要衝であり、互いに国土に 面している勢力を国家として承認し、緩衝地帯とした。
《帝国》は《北エスタンジア王国》を支援し、《皇国》は《南エスタンジア社会主義連邦》に各種支援を行っているが、共に長年の戦争で疲弊しており、国土と人心は荒廃し、周辺諸国への亡命者が相次いでいる。
《南エスタンジア社会主義連邦》
人口、約三二〇〇万
首都、《ゲルマニア》
《北エスタンジア王国》
人口、約二八〇〇万
首都、《イルミナ》
《中原諸国》
政体……其々の国家毎に独自の政体を有する。
三二の国家の集合体であるが、同盟が締結されている訳ではなく、協定による緩やかな連隊によって纏まっている集団で、正確には国家ではない。
《皇国》、《共和国》、《帝国》というアトランティス大陸でも定評のある強国の狭間に在る為、それの国家の国境に近い小国は、それに近い立場と意見であ ることが多い。《帝国》と《共和国》の係争地であり、《皇国》も政治的均衡を意図し、熾烈な外交戦と諜報戦が《中原諸国》では行われている。
周辺三国の三角貿易の中継地点ともなっており、アトランティス大陸の要衝の一つである。政治的には、三二の国家が乱立した状態であることから、周辺諸国 に対して影響力を行使する事は難しいと見られているが、《皇国》と《共和国》の間では《中原諸国》を経由した鉄道路線敷設が計画されている。
軍事力に乏しいが、国民総出で傭兵産業に肩入れしている《ランカスター王国》などもある為、質的には一部が周辺諸国に比肩し得る場合がある。
人口、三二国家合計で一二〇〇万
首都、三二国家全てにある。
《島嶼連合》
政体、“有力商家による独裁制”
大神洋上に浮かぶ島嶼を領土とする海洋国家。
嘗てよりローラシア大陸とアトランティス大陸を結ぶ要衝に位置する事から、商船の寄港地として、海上交通に重要な役割を果たしていた。しかし、《神国》 と地政学的に類似した状況下にあり、常に海洋の覇者として争っていたが、領土としている島嶼自体が狭隘な為に産業が発展せず、以前に起きた戦争で《神国》 に海戦で大敗して以降、自衛の警備艦隊と根拠地隊のみを国軍とするように制限されている。
商家による独裁制であることから、商人が絶大な権力を有しており、国民も大半が商人であるという歪な国家であるが、交易を重視して重商国家として大きな財産を築いている。
温暖な気候と豊かな海洋を有することから観光地としても世界的に有名で、国を挙げての観光業も盛んである。現在の比重としては交易拠点よりも観光に重きを置いている。
人口、約80万
首都、《マゼラン》
《ロマーナ王国》
政体……専制君主制。
温暖な気候と陽気な国民性を持つ半島国家。
経済と軍事では周辺諸国に大きく差を開けられているものの、地政学上、外敵の陸上侵攻を受け難い為に、アトランティス大陸の中では珍しく、外敵の脅威を 軽視している部分がある。しかし、国内の貴族を二分する内戦が終結して未だ然したる時間は経っておらず、戦火の爪痕は国内の各所にみられる。現在は国力の
回復に注力しているが、各分野の基幹技術自体が旧式化しており、周辺諸国との国力差は徐々に開きつつある。
果実酒の著名な産地であり、料理や文化の面ではアトランティス大陸有数の先進国であり、有力な観光先として《島嶼連合》と人気を二分している。
名将、ジュリオ・ガリバルディに率いられた国軍を有しており、政治面では内戦で勝利した公爵家が取り仕切っている。
人口、約3800万
首都 《エルヴァーナ》
《連合王国》
政体……“専制君主制”
《ディクシオ王国》を主体とする王権主義国家の連合体。
《王権同盟》に対抗する形で成立した国家であり、大多数が《ディクシオ王国》の属国から構成されることから、政戦は事実上、《ディクシオ王国》によって 取り仕切られている。現在は政体的に近しい《王権同盟》と軍事同盟の関係にあり、《共和国》や《協商国》とは停戦中である。
封権的な国家であることから、政治と軍事、経済も保守的な姿勢が多分に見られる。しかし、中央集権体制の堅持を成功させ、近代化に対応した国家でもあり、独裁制の国家が政体を其の儘に近代化するモデルケースとして、アトランティス大陸内外で評価する向きもある。
高度な統制による政治体制の維持と、計画経済政策による安定的な成長率を実現した国家であるが、同時に近代化によって平民に常に配慮せねばならない情勢から、“民主的君主制”と揶揄されることもある。
人口、約八九〇〇万
首都、《ディクシオン》
《王権同盟》
政体……“絶対君主制と専制君主制などの複数の君主制国家による軍事同盟”
《帝国》への脅威に対抗する形で成立した君主制国家による連合国。現在は通貨や価値観の共有を経て、限りなく統一国家に近い内情となりつつある。最大の 要因は《帝国》との長年に渡る戦争で多くの王族が戦死した為に、体制を維持する事が困難となった国家が続出したからである。現在は、大多数の王族が血縁関
係となり、国家による連合体である体裁であるものの、事実上、単一国家に近い内情となっている。
軍事力では《連合王国》と同等な規模の戦力を備えており、魔装騎兵の集中運用を得意とし、魔装騎兵師団を三〇個以上も保有する。《帝国》との衝突でも迂回機動による挟撃などで優位を確保している。
《帝国》成立以前より《連合王国》の全身である《ディクシオ王国》と干戈を交え続けていた軍事同盟国家による共同体。《帝国》に対して極めて好戦性を示す国家としても有名であり、大陸内でも極めて凄惨とされる戦線を抱えている。
人口、約九六〇〇万
首都、《ヴァーミリア》
《エルゼジール連合国》
政体……“皇帝主権による絶対王政”
大陸東部の砂漠地帯を中心とした領土を有する国家。厳しい環境を領土とする為に、保守的な思想を主軸とした国家運営を行っている。
目ぼしい資源もなく、領土の規模に関して少ない人口という面から他国からの侵略を受けることもなく、近代化が進む周辺国家に在って技術と工業の立ち遅れ が目立つ国家。以前は強大な騎馬民族を有し、大陸の三分の一を版図に収めていたが、近代に入ると周辺諸国の工業技術から生じた数々の兵器の前に敗走を重 ね、内部での分裂も相次ぎ、現在の規模に至る。現在も内戦中。
人口、約一億一〇〇〇万
首都、《パルミラ》
《協商国》
政体……“有力商家による寡頭制”
五つの強大な商家による合議によって国家方針を決める国家。
重商主義であり、その財貨を狙って《帝国》が最も苛烈に攻勢を行う戦線でもあるが、そうであるが故に十分な軍備を有している。防衛を主体とした戦略を 執っていることから、その軍備は火力と防御に重点が置かれており、大陸有数の火力戦を行うだけの火砲を保有している。《帝国》陸軍砲兵師団との長距離砲戦 による衝突は、大陸の軍事史に在っても有名である。
商業が非常に活発で、周辺諸国に対して金融などでも優位に立っており、有望な商用港を複数持ち、他大陸との交易も活発である。大陸を巡業する大商船団 は、一つで護衛の戦闘艦を含めると一〇〇隻を越え、これによる事実上の砲艦外交によって商業活動で優位性を得ているが、嘗て《神国》海軍に大敗を喫した 為、大星洋近傍には近づかない。
《協商国》とは軍事同盟の関係にあり、《連合王国》や《王権同盟》とは険悪な関係にある。
人口、約、七八〇〇万
首都、《アトラシア》
《自由都市共同体》
政体……“都市国家による合議制”
《協商国》と《列衆国》、《エルゼジール連合国》に挟まれた都市国家の共同体。
国土も狭く、人口も少なく、経済規模も小さい都市国家の紐帯によって形成された共同体だが、それでもなお周辺諸国の国力と軍事力の前には致命的な程に劣 勢で、それを踏まえて特定の国家に肩入れしない姿勢を取っている。無論、都市国家の共同体であるがゆえに、意思統一が儘ならないという現状もあり、周辺三
国を含めた大陸東部の国家の交渉の場としての価値から敢えて存続を認められている部分があり、《帝国》を相手にした三角貿易の一角として重視されている側 面もある
人口、三五〇万
首都、《シュテッセル》 国際法上は《自由都市共同体》内で最大の都市国家の首都が国家の首都として扱われている。
《列衆国》
政体……“統制帝による帝政”
嘗ては《立憲王国》と一つの国家であったが、《立憲王国》が建国する際に話し合いによって分離して建国された経緯を持つ。幾つもの王家を内包し、それらを指導するという名目上で統制帝という最高指導者階級が存在する。
低位種が主体の国家であるが、好戦的な国民性から《帝国》の侵略に対して最も頑強に抵抗している国家でもある。不正規戦を得意とし、正規軍すらも神出鬼没な軍事行動を見せ、奇襲という戦術に対して異常な拘りを見せる。
海軍は北衛洋での私掠船……海賊が前身である事から荒くれ者であり、陸海軍共々、蛮族であるという周辺国家の軍人による一致した見解を持つ。海洋に面せず内陸国であるが、海軍は友好関係にある《立憲王国》の軍港を使用している。
近代では指導者にも恵まれ、《立憲王国》との分裂の際も流血なく済んだことから、政治的手腕も侮れないものを持つ。
人口、約七二〇〇万
首都、《エスラハーン》
《立憲王国》
政体……“立憲君主制”
共和主義勢力と帝政主義勢力との会談によって建国された国家。
《列衆国》と分裂したものの、《帝国》の脅威もあり友好関係にある。《列衆国》の国民が好戦的であるのに対し、《立憲王国》は比較的温厚な国民性である。何故、《列衆国》との友好関係が続いているのかという点は大陸の政治史に於ける一つの謎とされている。
共和主義者の主張によって成立した国家であるが、未だに王家を保持している点は周囲の強権国家の姿勢に対する婚約を利用した政治を可能とする為である。
国土の西部は寒冷な気候であるが、東部は比較的温暖な気候である。水上戦力を自国の軍港を拠点としている《列衆国》の艦隊に依存しているが、陸上戦力は強大なものを有している。
人口、約五六〇〇万
首都、《エレツレム》