人物表

 

 

 

 

ネタバレするので、それを忌避される方は本編へと進んでください。



桜城・刀華(サクラギ・トウカ)

物語開始時点での年齢は一八歳。 誕生日、四月七日

身長一七四㎝。 体重六四㎏

人種人間族 男性



生い立ちと周辺の状況全般について

三大国の一つ《大日連》に於ける英雄の一人、桜城・刀旗の孫。

 戦闘国家としても有名な《大日連》に在っても、国家保守主義の旗手とされる一族“桜城家”の跡取りとして誕生した。兄弟姉妹は公式には居らず、父である 桜城・刀護は《大日連》大佐として、対支那戦役に従軍時にMIA(戦場で行方不明)となり、母の桜城・那由他も量子力学実験中の事故で死亡している。共に 遺体すら残らない最後であり、刀華は二人の死後、墓参りを一度も行っていない。

 小中学校に通っておらず、桜城家内の屋敷で育てられ、その教育には、当時の陸軍元帥であった祖父、桜城・刀旗とその同僚達によって行われた。これは、軍 人家系であり、同時に代々、天皇家である扶桑乃宮家の近衛武官を務めている桜城家の風習であり仕来りでもある。歴代の桜城家の当主が寡黙ながらも武断的な 人物という評価を受ける事が多い理由の一端であった。

 幼少の頃から陸軍大学校への入学が内定していた為に、高等学校で勉学に励む事もなく、交友関係も極めて狭い。特に同年代の友人は幼馴染みを除けば数人程度であり、人間関係の形成に於ける偏った考え方持つに至った。 

 刀華自身は、国家保守主義思想を持たず、別の主義を胸中に秘めており、それが理由で非公式ではあるものの、軍情報部主導となる極秘計画の立案にも関わっ ていた。これにより桜城・刀旗を中心とした皇道派との軋轢が生じた。これは皇道派の軍高官が立案した優秀な軍人の育成計画(神将計画)の被験体であると感 付いていたことも影響している。

 軍事と歴史、政治、思想などに纏わる多くの知識を学び、半ば趣味同然に扱っており、同時に《大日連》の行く末と、地球に於ける生存領域の限界を感じていた。


 性格

 極めて視野が広く、短時間で決断を下せる知能を持つが、基本的に興味のない範囲の出来事が多く、周囲からすると事なかれ主義にも見える。気性は基本的に穏やかである。しかし、自分が卑怯であることは認められるが、他人が卑怯である事に嫌悪を感じるとは、ミユキの言。

 社交的ではあるものの、他人に対する警戒感が著しく高く、必要以上には踏み込ませない。一族が権力を有している事から、人に対する距離の取り方に関しても注意を払っており、それが同時に踏み込んだ人間関係の形成を妨害している。

 歴史的、思想的な視点で物事を見る事が多く、講じる手段や方法に強引な部分が多分に見られる。基本的に当事者の意見よりも、長期的な視野で見た結果を優 先する為、他人の非難や苦言に対して動じる事がなく、それが他者との軋轢を生む事を当人も理解している。無論、理解していても考慮することは稀である。

 刀華は、《大日蓮》陸軍将校となるべく、桜城家で教育されたものの、刀旗も首を傾げる程に“威”を持っていない。しかし、非常の時、必要以上に非情となり、周囲を怯えさせることで人心を統制する術を持っており、刀華が強行的姿勢を取ることが多いのはこの為である。

 だが、高齢の老人には受けがいいという一面があり、何故か可愛がられる傾向にある。容姿が、優しげな風貌である事も相まって平時は、穏やかな人物に見ら れるが、有事ではその表情のままに強権的発言を行い、苛烈な決断を下す為に恐れられている。基本的には傲慢な姿勢がみられるが、それは自らが知る歴史上の 事象と照らし合わせて、合理的ではないと判断した事のみに限定される。その照らし合わせるものの大部分は軍事と政治、思想である。

 巫皇神月流剣術、師範代。

 座右の銘は、「理想を求め流される血涙に是非もなし」













ミユキ・リル・フォン・シュットガルト=ロンメル

天狐族は伝統的に苗字を持たない為、物語開始当初はミユキも持っていない。

物語開始時点での年齢は六二歳。(天狐族の平均的寿命は一〇〇〇歳前後)
B93/W55/H85

身長一六七㎝(狐耳含む) 体重五三㎏(狐耳、狐尻尾含む)

 狐種天狐族 女性


生い立ちと周辺の状況全般について

 トウカに対して恋心を抱いているが、同時にある種の不可侵性を感じている。トウカが《皇国》へと流れ着いた理由を知っているが、自らの一存でそれを隠蔽 するという行動に出た事からも執着は推し量れる。しかし、同時に自身だけでは繋ぎ止められないとも考えており、ベルセリカの下へと二人で訪れたのは、周囲 の目をトウカから逸らす目的以上にそうした理由があった。


 ヴェルテンベルク領に到着してからは、マリアベルが恋の仮想敵であると警戒していたものの、マリアベルがトウカの部下に推したリシアに対しても静かなる警戒を向けている。


魔導資質に優れた種族の中に在って、特に傑出したミユキだが、魔術に詳しい訳ではなく、軍用攻撃魔術などは使えず、身体強化や弓矢の長射程化などに使用している。

 趣味は狩猟と食事。

 弓術の心得があるが、基本的に狩猟の為である。

 自らが博識でない事を承知しており、状況判断をトウカやベルセリカに任せる事が多々あるが、基本的には不利な事に対しては狐の嗅覚を以て事前に避ける事 が多い。トウカをある程度理解しつつも、自らとトウカの関係を邪魔せず、トウカに自分のできない気遣いのできる女性を探しているが、当然ながらそんな人物 が居らずに悩んでいる。

 トウカに尻尾を櫛でブラッシングして貰う事が至福の時間で、その姿を他人に目撃されている。トウカが他の女性の尻尾を手入れすると機嫌を悪くするが、尻尾が複数ある種族(最多の例で九尾の狐)などのブラッシングしている時は、その量と手間から同情する傾向にある。



性格

 狐種の中でも最高位種族である天狐族の姫君であり、天狐族の次期族長でもある。

 天真爛漫と天衣無縫を地で行くが、狐らしい打算や思惑を巡らせる事もできる。純真無垢であるが故に、他者から見て規格外の行動を取ることが多く、周囲を驚かせることも度々ある。純粋である為、時として恐ろしい程に残虐(主に食糧である鼠に対して)である。

 愛刀は、小狐丸

座右の銘は、「女の子は尻尾で語るべき」






マリアベル・レン・フォン・グロース=バーデン・ヴェルテンベルク

 物語開始時点では四六七歳

 スリーサイズは、領軍最高軍事機密につき非公式。

 準龍種神龍族(神龍族と人間族の混血) 女性

 ヴェルテンベルク伯爵家当主



 生い立ちと周辺の状況全般について。

 神龍公、アーダルベルトの長女として生を受けたが、母が人間種であった為に、神龍族としての力を大きく減じており、幼少の頃より不遇を強いられていた。 しかしながら、当人はそれを然して気に留める事はなく、同年代の子供から受けていた虐めなどに対しては、正体を悟られることなく陰湿な仕返しをしては、母 に拳骨を受けていた。

 しかし、龍族特有の病を発病した事や、次期神龍公が病弱である事を忌避した親類によって、次第に公爵家で不利な立場に追い遣られていくことになる。これ に危機感を抱いたアーダルベルトが、当時、未だ発展していなかったヴェルテンベルク領の政務官としてマリアベルの派遣を決定する。功績をあげる事で、公爵 家内部の軋轢を緩和させることを意図したものであったが、未開拓地であった北部を強権的な手段と、自前で揃えたランツクネヒトを中心とした傭兵団により武 力でヴェルテンベルク領を平定していった。その為、軋轢は更に増す事となる。

 先代ヴェルテンベルク伯が老衰の為に身罷ると、その遺言によってヴェルテンベルク伯爵家の継承者として指名される。公爵家内部でのマリアベルの軋轢に加 えて、ヴェルテンベルク領軍の急速な軍拡を危険視されていた為、暗殺の危険から遠ざけようとの判断から、アーダルベルトもヴェルテンベルク伯爵就任を容認 した。

 そして、母の死後、公爵家の命脈を重んじて、新たなる花嫁を迎え入れるべきだとする公爵家内部の声に耐え切れず、新たな花嫁を迎え入れたアーダルベルトとマリアベルの仲も、元より決していいとは言えなかったが、急速に悪化していく事となる。

 一時的に、生を受けたアリアベルが、無意識に二人の間を取り持つ事で決定的な破綻は避けられるという事もあったが、無論、母親の死後に、新たな花嫁を迎え入れ、娘を新たに作ったという点は、公爵家の血統上の問題から理解はしていたが、納得はしていなかった。

 後に、トウカとの連携により政戦共に大きな成果を残す事になり、周辺諸国でもその手法が試されることになる。

 後世に於いて、マリアベルに関する資料の大半が死後に速やかに焼却処分された為、謎が多い人物とされるが、後に〈装甲姫マリアベル〉型戦略指揮戦艦に名を冠された事もあり、国際的な知名度を持つ。


 性格


 極めて専制主義的な発想でありながら、常識に捕らわれない柔軟性を持つが、それ故の失敗例も多く、良くも悪くも注目を集める人物である。厳格な統制から も分る通り、周囲の他意に極めて厳しい線を向ける人物である事も有名である。ヴェルテンベルク伯爵領黎明期には、不正官僚や横領軍人の悉くを、親族諸共に 処刑したことからもその苛烈な性格は窺える。そして、敢えて残忍な処刑法を選択する事で、自身に対する疑問や疑念を押さえ付けたことから、決して寛容な人 物ではないという印象を受けるが、ブロイケラー(ビアホール)や大衆浴場の設置をヴェルテンベルク領黎明期から行うなどの、公共事業を重視した姿勢から領 民より熱狂的支持を受け続けている。


 トウカ曰く、”得意げな顔が似合う女性”であり、同年代の女性陣よりも感情の起伏が激しく、子供らしい一面も持っている。


 精神的には、長期的な視野を持っていることから強靭なものであると見られがちだが、同時に他者に対して致命的なまでに臆病な側面も持っている。無論、それを隠すだけの老獪さを持つが、気を許した者に対しては一転して屈託のない感情を向ける。


 趣味は、飲酒と新型兵器立案。

 寧ろ飲酒は生きがいと言える。貯蔵数と種類においても膨大な量の酒を酒蔵に保管しており、領内の各蒸留所への支援にも力を入れている事から、ヴェルテンベルク領は《皇国》内に在って有数の蒸留所数を誇る地域となっている。


 新型兵器の立案に関しては、神龍公を殺害するということを主目的としたもので、弾道噴進弾や陸上戦艦から龍種に有効な毒物までと幅広い兵器を“思い付 き”でシュパンダウ特区の技術者などに命じている。大半の兵器は、マリアベルの“気が変わり”開発中止となったり、開発者と研究者からの嘆願によって白紙 になっているが、Ⅵ号中戦車や機動列車砲などの成功した兵器も存在する。遠距離から敵を撃破、或いは有速を利して回避するという発想を重視しており、標榜 する火力主義はそこからの派生思想である。

 座右の銘は、「発展と躍進は、流血と鋼鉄によって到来する」






 リシア・スオメタル・ハルティカイネン

 物語開始時点での年齢は一八歳。

B74/W57/H83

身長一六五㎝ 体重五一㎏

混血種人間族(天使種権天使族の遠い血縁にある) 女性



 生い立ちと周辺の状況全般について

 《皇国》に於いて神聖視される紫苑色の髪を持つ少女で、紫苑色の長髪から装虎兵士官学校時代より政治的な動きに巻き込まれ続けている。装虎兵士官学校首 席となるはずであったが、商家の干渉を嫌って自主退学。後に生まれ故郷であるヴェルテンベルク領の領軍に入隊し、その優秀さからザムエルと共に、マリアベ ルから目を掛けられる。


 数々の逸話を持つ女性士官としても陸軍では有名で、装虎兵士官学校時代に於ける密造酒事件は、現在の陸軍総司令部の後ろ暗い過去として一部軍高官に記憶されている。それ以外にも幾つかの”戦歴“がある為に、良くも悪くも有名人であった。


 指揮能力は装虎兵の部隊運用に傾倒しているが、トウカによる機甲戦を目の当たりにして以降は、諸兵科連合編制部隊の指揮にも注力している。それだけではなく、マリアベルの命令の下、領内警備や領内での民意統制に携わった都合上、情報戦の基礎知識も有している。


 交友関係が狭く、数えるほどの友人しかいないが、情報部と憲兵隊、貴族に知人を持ち、仕事上の交友関係は同期の軍人と比して極めて広い。


 ちなみに、陸軍高官の間では、密造酒事件の際に芋を原料にしたことから、その紫苑色の髪と掛け合わせて紫芋という不調で語られることが多い。


 未発達の胸を非常に気に掛けているが、そのことから男装が元である軍装が非常に似合うことから、ヴェルテンベルク領では麗人として婦女子から一定の人気を博している。


 性格

 両親は不明であるがザムエルと同様の孤児院出身で、その孤児院の院長であるラムケの影響を大きく受けている。つまりは、破天荒で急進的な姿勢と言えた。機に目聡いが、国粋主義者と言う訳でなく、周囲の者を踏み台にする苛烈さも持ち合わせている。


 野心的な人物でもあり、マリアベルを同じ女性として、非力な立場から権力を掌握した者として尊敬しており、それに続くようにと昇進の機会を虎視眈々と窺っている。


 つり目である為に強い自我の持ち主という印象を受けられるが、私生活では比較的穏やかで、孤児院の子供たちと交流があり、頼れる姉としての立場を確立している。






ザムエル・フォン・ヴァレンシュタイン

 物語開始時点での年齢は二七歳。

 身長一七七㎝ 体重七二㎏

 人種人間族 男性


 生い立ちと周辺の状況全般について

 リシアと同様の孤児院を出自とする男性将校で、軽薄な印象とそれを裏切らない軟派な思考の持ち主である。妹であるエーリカと共に孤児院で幼少期を過ご し、成長すると領軍士官学校へ進学。強攻を主体とする戦術を得意とし、領軍士官学校時代から、当時は主戦力とみなされていなかった戦車などの装甲車輛に興 味を抱き、戦車の集中運用に関する論文を腹痛執筆している。それがマリアベルの目に留まり、ヴェルテンベルク領軍に於ける装甲部隊編成の可能性を探る目的 で、当時、新設された装甲部隊に配属された。

 その後は、匪賊討伐や戦車を用いた治安維持……という名の威圧に功ありと短期間で昇進を重ね、ヴェルテンベルク領軍を代表する装甲部隊指揮官となった。

 黒髪に碧眼に、比較的優れた容姿を持つが、砕けた口調から厳格な将校には受けが悪く、下士官や兵士達には気安い存在として高い人気を誇る。トウカのヴェ ルテンベルク領軍入隊後は、共にマリアベルに最も優遇される男性士官の双璧として話題となった。共に性格が正反対であり、軍事行動に於ける姿勢もまた同様 であるが、当人達の関係は極めて良好である。ザムエルはトウカの戦略的視野を信頼し、トウカはザムエルの野戦指揮能力を高評価した。



 性格

 軟派な性格を裏切らない程に女性関係には奔放で、憲兵隊に御世話になることは日常茶飯事であるが、軍人の女性に対しては手を出す事は少ない。共に死と隣り合わせの職業に就くからであり、一般女性との関係も一線を引いたものとなっている。

 妹であるエーリカに対しては極めて過保護な一面を持ち、長らく無任所にするようにマリアベルを通して領軍司令部から圧力を加えていた。しかし、女性関係に奔放な為に妹を溺愛しているとは見られていない。

 極めて拙速を尊ぶ性格であり、果断と強攻を得意とする事から、期待に背かず兄貴肌の青年であることから、部下……特に下士官や兵士からは頼れる兄貴とし て慕われている。そんざいな言葉遣いであることから、一部の高級将校などからは受けが悪いが、「あれなら仕方がない」とある種の諦観を以て見られている。







ベルセリカ・ヴァルトハイム

 物語開始時点での年齢は五九二歳。

 身長一八八㎝ 体重六九㎏(狼耳、尻尾含む)

 B86/W62/H88

 狼種天狼族 女性

 剣聖の称号を持つ。



 生い立ちと周辺の状況全般について

 翡翠の瞳と鳶色の髪を持つ天狼族の麗人。

 シュトラハヴィッツ伯爵家の長女として誕生し、幼少の頃から魔術と剣術に対して非凡な才能を見せるが、父親であるジギスムント・ヴァルター・レダ・フォ ン・シュトラハヴィッツ伯爵(当時)との確執から若くして出奔し、それ以来、実家であるシュトラハヴィッツ伯爵家との縁は完全に切れている。

 放浪の旅の最中で、主君と仰ぐ男性を見い出して恋仲となるが、相手が人間種の豪商であった為に周囲から白眼視される。

 後に皇紀四三二六年に行われた《皇国》西部、ティオジア地方に於いて行われた旧《連合王国》軍との戦闘に近衛軍士官として参加し、多大な戦果を挙げている。

 ティオジアの奇蹟とも呼ばれる西部遊撃戦で一〇〇〇名足らずの近衛騎士と共にベルセリカは約三〇〇〇〇〇名を相手に限定的とはいえ勝利していた。結果として輜重線への度重なる襲撃による圧力と、奇襲によって敵司令官を討ち果たすという戦果を挙げている。

 それ以外でもベルセリカは幾多の武功を上げており、見方によれば《皇国》の発展期を守護した剣聖に他ならない。

 しかし、豪商であった主君と三神公との確執の結果、主君は自害。その為、五〇〇年近く厭離穢土を決め込んでいた。三神公の中でも主君に対して策謀を巡らしたフェンリスに対し、凄絶なまでの隔意を抱いている。

 後にトウカとの邂逅により、五〇〇年を超える時を経て、再び歴史上に姿を現した。


 性格

 五〇〇年以上も厭離穢土を決め込んでいた為に、厭世的な性格と考えを持つようになる。自らの意思によって行動する事は少ないが、決して消極的なわけでは なく、敵対者に対しては容赦がない。武士然とした言葉遣いと武勇を尊ぶ姿勢から剣聖の称号に相応しい人物であるが、家族関係に口を挟まれることを何よりも 嫌悪する。そして、三神公のフェンリスに対しては常に攻撃的な姿勢を見せる。

 貴人にして麗人としての姿と立ち振る舞いから、北部に於いて婦女子から極めて高い人気を誇るが、当人は別段と意識した所作を行っている訳ではない。

 実は、武士然とした言葉遣いは意識して行っているものである。






 セルアノ・リル・エスメラルダ。

 物語開始時点での年齢は不明。一〇〇〇歳は越えていると推測されている。

 身長二九㎝ 体重一四㎏(羽根含む)

 スリーサイズは不明。

 幻想種妖精族 女性



 生い立ちと周辺の状況全般について

 多くが謎に包まれた女妖精。

 イシュタルと共に、マリアベルがヴェルテンベルク領転封時より交友関係がある数少ない人物で、主にマリアベルを政治経済の面から支え続けた。
ヴェルテンベルク領首席政務官への在位は四五〇年を超える。

 極めて長期的な視点で物事を判断する事に長けており、マリアベルの掲げた重工業化政策に賛同し、幾つもの企業の成立と調停を行ってきた。ヴェルテンベル ク領に起源を持つ主要な企業の多くは、セルアノが無視し得ない規模の株価を押さえている場合が多いことから、マリアベル以上に札束で相手を叩き伏せる人物 として名を馳せている。

 魔導資質に優れる妖精種の中でも卓越しており、皇立魔導院から散逸したと判断されている秘術や呪術、禁術を多数使用できる。

 急進的姿勢を露わに内戦指導していたトウカに対して、嫌悪感を抱いているもの、マリアベルとトウカの関係を察して沈黙している。内戦終結後は、互いに経 済活動を重視しつつ、国内企業、特に軍需企業を影響下に置く為に結託しており、マリアベルの遺言もあることから協力体制を構築している。

 ちなみに六枚の(はね)で揚力を発生させて飛行が可能である。


 性格。

 トウカに匹敵する程の皮肉屋だが、引き際を弁えている。敗者の取り分を踏まえて、徐々に自らの取り分を増やして強大化していく政策を取ったヴェルテンベ ルク領の政治工作を見て分かる通り、極めて長期的な視野で物事を判断できる。しかし、忍耐力があるわけではなく、寧ろ同年代の長命種と比して短期と言え た。尊大な態度と妖精らしからぬ言い回しから、妖精族の品位と幻想を打ち砕く佇まいと言える。実は当人はそれを好んで行っている。

 その態度と物言いから誤解されがちだが、認めた相手にはそれ相応の敬意を払い、助ける為に無理をする事も厭わない。









イシュタル・フォン・イシュトヴァーン

 物語開始時点での年齢は五一七歳。

 身長一八五㎝ 体重六五㎏

 狼種黒狼族 女性


 周辺の状況全般について


 褐色の肌と流麗な銀の長髪を持つ長身の女性。黒狼族であるが、感情が気取られる事を気にして狼耳と尻尾は魔術で隠蔽している。

 セルアノと同様に、マリアベルがヴェルテンベルク領転封時より交友関係がある数少ない人物で、ヴェルテンベルク領軍司令官へ新補されてから四五〇年を超 える。セルアノと共に長らくヴェルテンベルク領の政戦の双璧として君臨し続けた女性指揮官であるが、当人の得意とするところは野戦指揮官であり、戦略面で の造詣はそれほどに深くない。無論、兵力と目的の面から戦略を展開することのない領軍に於いて、その欠点が顕在化することはなかった。

 ヴェルテンベルク領軍司令官という立場から誤解されがちだが、私生活に於いては極めて女性的な人物で趣味に御菓子作りなどがあり、権威を保持するという問題から情報部が張り付いて“必死”に隠蔽している。ちなみに作られた御菓子は基本的に、マリアベルの胃へと消える。

 褐色の肌とヴェルテンベルク領軍第一種軍装が漆黒である事も相まって、軍務時の姿は、特注の刀身の長いサーベルを佩用していることあり威圧感があるが、当人はそれを気にしている。

 本来は軍狼兵将校であり、ヴェルテンベルク領軍司令官就任以前は陸軍第一六軍狼兵連隊〈ノイエンエーガー〉連隊長の任に就いていた。


 性格

 軍務では厳格にして果断に富んだ人物として有名であるが、基本的には温厚であり女性的な人物でもある。よって、マリアベルやセルアノを抑える為の人物として見られていることから、軍務以外で接触する有力者も多く、その為人を知る者は意外と多い。








 アリアベル・ラウ・フォン・クロウ=クルワッハ

 物語開始時点での年齢は六九歳。

 身長一七三㎝ 体重五四㎏

 龍種神龍族 女性



 周辺の状況全般について

 クロウ=クルワッハ公爵令嬢。

 マリアベルの妹として生を受けるが、異母姉妹であることからその能力に大きな差異がある。幼少の頃から強大な魔導資質を持ち、若くして巫女としての修練 を収めて大御巫に親補された経歴を持つ、《皇国》の宗教指導者。天霊神殿の大御巫である、行政府の一つである神祇府の長官でもあり、《皇国》の冠婚葬祭や 祭事の頂点として君臨している。

 前妻との第一子であるマリアベルの存在から複雑な家庭環境に置かれていたが、幼少の頃から巫女としての修練を収めるという名目で、天霊神殿で過ごす時間 の割合が多く、マリアベルを取り巻く状況に、他の家族や親族と認識に大きな隔たりがある。更に《帝国》軍との小競り合いで戦死した兄であるリヒャルトを 喪った事から、姉であるマリアベルに対して強い執着を見せる。

 神殿騎士団への所属経験もあり、魔導騎兵指揮官としての教育を受けている。戦略や政治に関する専門的な知識を身に付けてはいるが、その対応は一般的な感 性と思考の域を出ず、政戦両略の才はない。しかし、隔絶した魔導資質を有する事から、魔導砲兵連隊の戦術規模魔術を個人で行使できる。

 父親である神龍公アーダルベルトとの関係は、その立場と状況から冷え込んでいるが、家族としては一定の信頼関係がある。



 性格。

 強権的な姿勢が目立つが、それは国政に限定しており、私生活は寧ろ物静かである。趣味が読書であり、神祇府での職務中に読書をしている事は有名である。 有名無実化しつつある神祇府の権威に対して、実際は然したる未練も執着も持っていないが、内戦に利用した為に強固な神権主義者であると対外的には印象付け られている。

 決して謹厳な人物と言う訳ではなく、歴代大御巫と比較すると、寧ろ懐に余裕がある上に、配下の者達に寛大な姿勢を取っている。それ故に、神祇府は内戦中であっても良く纏まっていた。

 以上のことから、アリアベルという人物は決して、正確に難がある人物ではない。女性らしい一面を多分に持っており、大御巫に神補されて以降も、身の回り の事は基本的に自身で行っている。神祇府では、新人の巫女や目上の神官などとも日常的に交流を行っており、噂に聡い一面を持ち、流布させることも多々あ る。






 レオンディーネ・ディダ・フォン・ケーニヒス=ティーゲル

 物語開始時点での年齢は六七歳

 身長一七八㎝ 体重五七㎏

 虎種神虎族 女性


 周辺の状況全般について

 三神公レオンハルトの娘であり、ケーニヒス=ティーゲル公爵令嬢でもあるが、当人は幼少の頃より英雄的活躍に憧れている事と、貴族令嬢の受動的な生き方 に否定的な姿勢であったことも相まって、適正年齢に達すると陸軍装虎兵士官学校の門を叩いた。極めて平凡な成績で卒業後は、西部方面軍司令部直轄、第二七 装虎兵連隊〈ヴェルトロイト〉隷下の小隊に配属されるが、レオンハルトの親心(圧力とも形容できる)によって、所属が曖昧となる。干渉されることを忌避し た陸軍府とレオンハルトの間で長い長い駆け引きが繰り広げられ、レオンディーネはそれを尻目に、レオンハルトの影響下にあった装虎兵中隊を率いて国内での 匪賊討伐を独自行動で行っていた。この為に臣民の間では、それ相応の知名度を誇る。

 紆余曲折を経て、陸軍は大幅に譲歩し、匪賊討伐を名目に国内での独自行動を許可した。

 五年近くも匪賊討伐に時間を費やし、時には犯罪組織の壊滅などの明らかに任務外の出来事に応じていた。場合によっては周辺諸国の治安維持機関との交渉を独自に行うなど、アリアベルの“歩く国際問題”と対を成す意味で“歩く治外法権”という異名を冠されている。

 銀糸の様な長髪と黄金色の瞳を持ち、女性的な身体つきをしたレオンディーネは、指揮官としても見栄えが良く、装虎兵総監主催の舞踏会には常に主賓として招待されているが、アリアベルに着せ替え人形にされた心的疲労(トラウマ)から一度も参加していない。


 性格。

 極めて実直にして、直線的な思考を行う少女である。良く言えば、素直にして純真。悪く言えば、短期で猪突猛進。虎であるが。

 扱い易い性格と見られる向きもあるが、ともすれば思惑すら噛み破る怖さを持ち、装虎兵の野戦指揮官としては傑出した突破力を有し、自らも戦斧(ハルバード)による一撃で、装甲兵器を擱座させられるだけの身体能力と魔導資質を持ち合わせている。無論、その実直な性格が仇となり、その能力を十全に扱えていないが、当人もそれを痛感しており、トウカとの邂逅でその才能に目を付けた理由には、その辺りが関係している。






 ヘルミーネ・ルオ・フォン・フローズ=ヴィトニル

 物語開始時点での年齢は七二歳

 身長一六八㎝ 体重五四㎏

 狼種神狼族 女性


 周辺の状況全般について

 神狼公の末姫にして、皇立魔導院に籍を置く研究者であり、放浪癖のある気紛れな神狼。アリアベルやレオンディーネとも面識があるが、当人は研究にしか興 味を見いだしていない。よって二人に対して然したる感情は抱いていない。対照的にトウカに対しては、多くの知識を有している事から並々ならぬ興味を抱いて いる。研究に没頭するあまり、研究室への籠城は日常茶飯事で、心配した研究員による決死の突入部隊が編成される事もまた同様であった。

 実は、アリアベルよりもマリアベルに近しい人物であり、兵器生産や研究開発などの分野で比較的活発な遣り取りがあった。中戦車や機動列車砲、〈剣聖ヴァ ルトハイム〉型戦艦などもヘルミーネが大きく関わっており、ヴェルテンベルク領軍の近代兵器の源流は、ヘルミーネを根幹としていると言っても差し支えな い。

 他の三神公令嬢と違い知名度は極めて低いものの、軍高官や企業などの高度な技術を必要とする者達にはある程度の知名度を持つ。しかし、神狼公の血縁であ る事は隠匿している……訳ではないが進んで口にする訳でもなく、同一人物であると見られることはない。無論、神狼公であるフェンリスがそれを許容し、半ば 放置している事も原因の一つである。

 武道は嗜んでいないが、同種の平均以上の魔導資質に加えて、愛用のロングバレルに改造されたP89自動拳銃を所有している。


 性格

 長い黒髪に眠たげな表情から気だるげに見えるが、実際はそれが基準。睡眠時間を削ることが多いために、常態的に眠たげである。しかしながら興味のある事象に相対した場合は、極めて活発な活動と表情を見せることから、自由気儘な人物。


 天女の如き黒の私服を良く纏っており、研究の際はその上から白衣を羽織る為に、研究者や開発陣からは、翻る白衣とその外観から“微睡みの天女”と密かに 呼ばれている。実際に書類の山脈で熟睡している事も少なくないが、当人の危うげな佇まいと自由奔放な仕草から、周囲に可愛がられる傾向にある。主に御菓子 で餌付けされている。





 アーダルベルト・ラウ・フォン・クロウ=クルワッハ

 物語開始時点での年齢は九五六歳

 身長一九五㎝ 体重七八㎏

 龍種神龍族 男性


 周辺の状況全般について

 三神公の一柱であるクロウ=クルワッハ公爵位を拝命している神龍族の男性。若くして神龍公となり領地の近代化と国権の護持を推し進めてきた人物であり、 北部以外の貴族からは大きな支持を得ている。娘にマリアベルとアリアベルがいる。長男であったリヒャルトは、既に戦死している。

 内戦に当たっては対処療法的な展開が目立つが、実際は水面下で周辺諸国が内戦への介入を行わない様に政治的牽制や資源輸出による揺さ振りなどと、軍事力 を用いないありとあらゆる方法で周辺諸国の火事場泥棒の意思を摘み取り続けていた。特に《共和国》に対する牽制は、《皇国》政府から極めて高く評価されて いる。

 皇城府と政府、門閥貴族などとの連携を重視し、その支柱となるように振る舞っている。

 その代償として、波風を立てない姿勢からマリアベルとの確執が致命的なものとなり、そのマリアベルが内戦に於いて、蹶起軍や北部統合軍の軍事力の大部分を、事実上の影響下に置いていたこと踏まえると、内戦は二人の確執から始まったと考えても過言ではない。

 嘗ては美丈夫であったことを窺わせる偉丈夫の佇まいは、貴族の代表として遜色ないもので、歴代皇王の忠臣として高い国際的知名度を誇る。



 性格

 長期的な視野を持ち、五〇〇年越しの確信的利益を見据えた政治戦略に関する点は、国際社会で研究の対象となっているが、当人はそうした風潮に対して謙虚 である。誠実が服を着た人物とされるが、誠実であるからこそ相手を謀略で嵌める際も誠実に一切の手を抜かないと近しい者に口にしており、政治に於ける善悪 を論じない現実主義者でもある。

 冷厳な人物で、威風に満ちた姿から領民にも絶大な支持を受けているが、娘の事となると極めて消極的になる一面を持っている。蹶起軍に対する初期対応の遅れは、まさにそれが理由であった。

 娘を溺愛しているが、どう接して良いか分らない何処にでもいる親父とも取れる。同じ三神公のレオンハルトやフェンリスとは極めて近しい間柄で、家族関係 の愚痴を零し合うことから、決して冷厳なだけの人物ではない。将校としての従軍経験もあることから、配下に対する配慮もできる。絵に描いた様な有能な貴族 と言えた。







 レオンハルト・ディダ・フォン・ケーニヒス=ティーゲル

 物語開始時点での年齢は六三二歳

 身長一九一㎝ 体重八五㎏

 虎種神虎族 男性


 周辺の状況全般について

 三神公の一柱であるケーニヒス=ティーゲル公爵位を拝命している神虎族の男性。他の三神公よりも若く、アーダルベルトやフェンリスからは手のかかる弟分 として見られている。一人娘であるレオンディーネを溺愛しているが、裂帛の意思を秘めた瞳に、虎種の傾向として多分に漏れない攻撃的な姿勢を持っており、 国内から猛将の呼び声も高い。

 ちなみにケーニヒス=ティーゲルという公爵家の名は、初代皇王より与えられたもので、レオンハルトはいたく気に入っている。トウカは独逸帝国軍の重戦車 の名であると知っているので、突破力がありそうだと内心で思っている。実際、極めて突破力に優れた指揮官でもあり、装虎兵師団の運用では《皇国》の軍事勢 力の中でも最も著名な指揮官と言えた。

 三神公の中でもトウカに対して露骨に否定的な人物であり、レオンディーネとトウカの衝突の理由と結末も相まって、国内の勢力関係の懸案事項として見られている。


 性格。

 勇猛果敢にして好戦的、しかしながら冷静な判断を下す事のできる知性を持ち合わせている。無論、気質的に攻撃的な判断を好んでおり、実は内戦への介入による早期鎮圧を当初から目論んでいたが、中央貴族と足並みを揃える事を理由に行動を長らく手控えていた。 

 その猛々しい容姿と性格に似合うだけの振る舞いと服装を好む人物でもあり、豪奢でいて傾けた服装から、外観の面でマリアベルと双璧を成す人物と言える。







 フェンリス・ルオ・フォン・フローズ=ヴィトニル

 物語開始時点での年齢は九七八歳

 身長一七八㎝ 体重六四㎏

 狼種神狼族 女性


 周辺の状況全般について

 三神公の一柱であるフローズ=ヴィトニル公爵位を拝命している神狼族の女性。謀略と計略に秀でた女性であり、《皇国》の政治に於いては政府の意向よりも 重視される場面もある。緻密な計算と繊細な所作から隙のない妙齢の御婦人との評価もあるが、娘に対する自由奔放な教育などを踏まえると決して策謀を巡らす だけの女性ではない。

 未婚のまま、二人の娘を出産しており、相手は神狼族の男性であったが行方不明となっている。

 しかし、その謀略と計略を中心とした政治姿勢から反発を見せるものも少数ながら存在する。特にベルセリカとの確執は有名であり、過去の軋轢は《皇国》現 代史にも記されていることから、ベルセリカが歴史の表舞台に姿を現した事で、狼種同士の派閥争いが起きる可能性を示唆する政治家や貴族も少なくない。

 三神公の中でも最長命で、アーダルベルトやレオンハルトにとっては頭の上がらない存在である。特にレオンハルトは弟扱いされていることに不満を持ってお り、フェンリスを老婆扱いしては返り討ちにされている。アーダルベルトは逆らうことの不毛と無理を幼少期に悟っており、基本的にはフェンリスに対して受動 的である。

 正規軍への従軍経験を持ち、浸透突破や威力偵察を得意とする《皇国》軍狼兵の戦術の基礎は、フェンリスによる立案であった。故にトウカの陸空立体戦術や 装甲兵器による電撃戦は、部隊展開速度を重視した戦略であると理解しており、大きな興味を抱いている。基本的な軍事戦略の考え方としてはトウカと類似して おり、機動力を重視している。

 神狼族の利益からトウカを引き込めないかと思案しており、ヘルミーネがトウカに近しい立場にあると知って以降は、二人の関係を利用できないかと目論んでいる。


 性格。

 ヘルミーネが成長し、妖艶でいて計算高い一面を備えた佇まいである。つまりヘルミーネはフェンリスの容姿を引き継いでいると言えた。

 妖艶な出で立ちは多くの者を惹きつけて止まず、当人もそれを理解しているが故の立ち振る舞いをしている。無論、謀略と計略を得意とすることが有名である為に、正面から言い寄る者は少なくないが、実は年若い男性を好んでいることもあり、相手を受け入れた事はない。









 マイカゼ・リル・フォン・グロース=バーデン・ヴェルテンベルク。

 物語開始時点での年齢は六一三歳

 身長一七九㎝ 体重六二㎏

 狐種天狐族 女性

 物語登場時は名前のみで、家名は無い。


 周辺の状況全般について

 天狐族族長のシラヌイの妻にして、ミユキの母でもある女性。

 シラヌイは決断力に優れた人物であるが、細々とした采配などはマイカゼの指示によるものが多く、天狐族では参謀的な立場を有している。外界との接触を可 能な限り割けて神秘性を保持するという戦略を維持し続けていた天狐族の方針を転換する決断を下したのは、事実上のマイカゼである。

 トウカに対しては、期待と不安を抱いている。天狐族の方針転換を齎したトウカを評価する一方、その急進的な姿勢に一握の危うさを感じており、それがマリ アベルと結託する事に当初は危機感を持っていた。しかしながら、後々のトウカの活躍を目の当たりにして、追従する決断を見せる。

 流麗な顔立ちの中にも可憐さを残した顔立ちは、ミユキと似ている。ミユキはマイカゼの容姿と性格共に色濃く影響を受けている。

 外界との接触を可能な限り避けていたが、書物による知識に加えて、天狐族の隠れ里の交渉役としての責務を担っていた為に、同年齢の高位種よりも優れた政治的手腕を有している。だが、特筆すべきはその優れた直観であり、物事の本質を見抜く事に極めて長けている。


 性格

 鋭い直観の持ち主であるが、同時に茶目っ気のある人物でもある。他の著名な高位種と比較すると柔らかな性格と雰囲気の持ち主であり、気さくな人物である 事も相まって、グロース=バーデン・ヴェルテンベルク伯爵位拝命後は硬軟織り交ぜた姿勢から周辺貴族から高評価を得ている。

 妙齢の御婦人の様にトウカとミユキの関係を眺めて見守っているが、時折、口と手を挟むことで、その関係を進ませたり混乱させたりと若者達の恋模様を楽しんでいる。










 シラヌイ・リル・フォン・グロース=バーデン・ヴェルテンベルク。

 物語開始時点での年齢は六八五歳

 身長一八九㎝ 体重八五㎏

 狐種天狐族 男性

 物語登場時は名前のみで、家名は無い。


 周辺の状況全般について

 天狐族族長にして、ミユキの父でもある男性。

 高い魔導資質を持ち、優れた剣技を身に付けており、天狐族の隠れ里の男衆の練兵はシラヌイが主導で行われている。無論、狩猟や大型魔獣の退治を主体に据えた練兵で、対人戦闘の経験は少ないが、対魔獣戦闘などに関しては、非公式ながら《皇国》有数の実力者と言える。

 無駄のない身体つきをしており、長着に羽織を纏う姿は士族階級と見紛うばかりの佇まいをしているが、グロース=バーデン・ヴェルテンベルク伯爵位は、マ イカゼが拝命した爵位であることから、シラヌイは貴族の夫に過ぎない。故に、《皇国》の法令上は、グロース=バーデン・ヴェルテンベルク伯爵君夫という肩 書となる。無論、その権力は然したるものではない。

 族長ではあるが、天狐族の寄る辺となりつつあるグロース=バーデン・ヴェルテンベルク伯爵家を統率する立場にあるのが、自らの妻であることを気に病んで いる。権力に対して危険視する代々の天狐族族長の考えを継承しており、トウカに対しては否定的であるが、ミユキの恋人となって《皇国》の中枢に食い込みつ つある現状に静かな危機感を抱いている。


 性格

 一つの一族を統率するに相応しい果断さを持ち合わせ、潔い人物であるが娘たちの事となると態度が豹変する。端的に言うならば親馬鹿であるが、三神公の様 に娘の前では慎み深い姿勢を見せることはなく、ミユキなどの前でも全力の親馬鹿を披露していた。しかし、重要な局面では、持ち得る情報の中から最善に近い 答えを導き得るだけの才覚を有している。

 保守的な人物で、敗者の取り分を踏まえた言動が目立ち、生き方として本質的にトウカとは対を成すと言っても過言ではない。