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一五軒目 ソーセージダイニング Bruno

 

 
 TEL         075-255-4554
 住所        京都府京都市中京区蛸薬師通油屋町146
 営業時間     17:00~1:00
 定休日       木曜日



 店の外観

 錦通りの一本隣の通りにあります。ドイツ国旗が掲げられていて分かりやすい。二階にはガレット専門店やバーがあったりと、建物全体で飲食店をしている場 所の一階で営業をされています。扉が奥まったところにあるので、もしドイツ国旗が見えないと逆に見え辛くて通り過ぎてしまうこともあります。





 店内の様子

 シェフの方は中年のドイツ人に多い恰幅の良い風体の日本人です。初見だと体が大きいので、一瞬、本場の方かと勘違いしてしまいます。無論、顔立ちは普通に髭の日本人なのですが。

 店内は居心地の良い雰囲気で、ドイツ料理店というよりもダイニングバーに近いかも知れません。ビールの種類も多く、酒の面でも客を飽きさせません。洋食 店というのはワイン以外は種類がすくなくて、ワインが苦手だと進め難いのですが、ここは非常にお勧めし易いです。緩やかな雰囲気も相まって、ついつい長居 してしまう訳ですね。




 つきだしのフリッタータ

 卵料理であり、キッシュに近いかも知れない。だが、こちらはハムが多く混ぜ込まれており、味付けも濃い目である。メインに近い量と味付けが、いきなり現 れたことには驚いたが、注文した料理が来るまでに、これを肴にビールを飲むことができる。量があるので注文の品が来るまで酒の肴に不自由することはない。 冷めた卵料理というのはあまり好みではないのだが、肉の味が強く出ており卵料理とは思えない。




 シャルトキュトリーの盛り合わせ。

 シャルキュトリーという単語はフランスの“肉”と“火を通した”が語源で、主に豚の肉や内臓などから作ったソーセージやハム、パテ、リエット、テリーヌなどの食肉を加工したものだそうです。ブルーノさんのものは全て自家製とか。


 さて、これを注文すると一枚名の写真のように出てきます。スモークによる臭い付けですね。最近は京都でちらほらと見受けられるようになったので、流行り かも知れません。これによって直前までスモークが中に充満している状態なので、薫り高い肉を演出できるわけですね。ちなみに開けるとどこかのCMに玉手箱 の様に煙が充満して、鼻孔を香ばしい木の薫りが擽ります。


 中には肩、豚タン、豚モモ、鶏ムネ肉のシャルトキュトリーが盛られております。


 どれもスモークされているだけに薫りがあり、しっとりとした食感の肉類はどれも旨味が凝縮されておりビールが進みます。子供や女性へのパフォーマンスと いう意味でもありだと思いますが、濃厚な肉の味の為に男ばかりでのむさ苦しい会話にも使えます。ドイツ人が太る理由が良く分かる。シェフの腹も本場の修行 の成果の一つに違いない。


 これとは別に鴨の燻製やベーコン、パテ、サーモンなどもラインナップにあります。肉以外もシャルトキュトリーに分類されるらしい……





 一枚目がサーモンで、二枚目が生ハム。

 当然の様に濃口の味であり、後に残る塩の薫りが舌を楽しませてくれます。それを乱暴にビールの押し流すという狐はやはりおっさんなのだろう。





 豚ヒレ肉のパストラミ。

 この端に付いている粗挽き胡椒が非常に宜しいアクセントになっています。ちなみに、パストラミとは香辛料で味付けした肉の燻製のことです。実は狐はこれ が大好きでして、学生の頃は購買に売っているパストラミを挟んだサンドイッチを全力疾走で買いに行ったもので……という話は置いておいて、隣のマヨネーズを付けると濃厚な油に、胡椒の刺激、燻製された肉の旨味は何とも言えません。パンに挟みたい。




 赤鶏の生ハム。

 鶏を生ハムにするというのはあまり聞きませんね。でも、仄かな鶏の味がありながらも、生ハムの食感なので少し不思議な気がします。塩気は抑えられているような気もしますが、豚肉を食べ続けて飽きはじめた頃の時の変化球として、これを注文するのは良いと思います。





 牛ハラミのバベットステーキ~ポルト酒ソース~

 柔らかい一品。甘口のソースなのだが、爽やかな酸味も感じられて肉の旨味が引き締められるような感覚に陥る。ハラミ肉だけでも十分に美味なのだが、ソー ス一つでこうも変わる者なのかと唸らざるを得ない。ポルトソースということはフランス料理のポートワインを使ったソースと言うことになるが、やはりシェフはドイツ料理ばかりではなくフランス料理についても造詣が深いのかも知れない。






 塩漬け牛バラ肉のステーキ

 写真を見る限りは柔らかそうに見えるが、実は中々に硬めの肉である。しかし、塩漬けというだけあり旨味が凝縮しているので、噛み締めれば噛み締める程に味が浸み出してきます。

 これは最早、ビールのつまみだ!

 お持ち帰りしたいくらいに、ミュンヘン式のビールに合う。日本の一部のビールの様に苦みが強調されていないビールの風味と口内で程よく合流して心と体を満たしてくれます。





 パテ・ド・カンパーニュ。

 パテ・ド・カンパーニュは「田舎風パテ」という意味で、つまりはフランスの家庭料理です。肉類に香辛料やハーブ類などで味を付けて、型に入れて焼き固め たものを冷蔵庫で冷やして冷製のオードブルにしたやつ……とのことらしいです。正直なところ、パテは店毎に随分と差が出るので普段はあまり注文しません。 焼き固める時に加熱し過ぎたものは冷たいハンバーグなので。しかし、こちらは香辛料やハーブも強すぎず、自分の好きな生肉に近い感触と風味をしているので 大変に満足でした。しかしこちらもフランス料理なんだが……ドイツ料理……





 H&M(自家製ハムとマッシュポテト)

 そう、ここからじゃが芋地獄が始まったのだ……。いえ、まぁ好きなんですがね、じゃが芋。フリードリヒ陛下万歳です。ドイツ人が好きな組み合わせをしま したと言わんばかりの一品ですが、ドイツ人の主食の一翼を担う理由も分るというものです。塩気と満腹感という見た目の盛り付けからは想像できない満腹感。




 ソーセージの大盛り。

 ヒャッハー、ソーセージ祭りだぜぇ!という言葉が聞こえてきそうなほどに、腹が満たされる一品。これは最早、戦争です。メニューの紹介を含めて書かせていただきます。

 これはブルーノのソーセージのほとんどが一気に楽しめるという一品ですが、大人数で行かないと食べきれない量です。たまに新しいラインナップが入ったり しているソーセージですが、勿論、個別に注文することも可能です。ちなみにドイツでは、ソーセージのことはブルストと言います。

 一応、分かる限りのソーセージの種類を紹介したいと思います。



 Brunoソーセージ

 セージをベースに様々な香草や香辛料をたっぷりと使ったブルーノの定番ソーセジです。



 粗挽きソーセージ

 ミミガー入りのお肉が詰まったソーセージ。食べごたえがあります。ソーセージというよりも肉そのものに近いです。



 メキシカンチョリソー

 カエンペッパーとハラペーニョが入ってます。ほど良い辛さが病み付きになるとのことですが、実際はかなり辛いです。添えられているじゃが芋のペーストと一緒に食べるといいと思います。辛すぎてビールが進むので酔ってしまいます。

 ちなみに単品で注文すると、この様な感じです。






 ドイツ・ベルリンのソーセージ「カリーブルスト」

 ソーセージとフライドポテトの上にオリジナルソースが付いています。ドイツではファーストフード感覚で食べられているそうです。確かに手軽に食べられる一品で、フライドポテトの塩気とソースの付いたソーセージの旨味が良く合っております。

 ちなみに単品で注文すると、この様な感じです。








 ドイツミュンヘンのソーセージ「白ソーセージ」

 焼かずにボイルしたソーセージだそうです。レモンとパセリの薫りで甘いマスタードを付けて食べます。爽やかな香りに甘いマスタードの風味が楽しめます。 ちなみに、これは日本のソーセージと違い、包まれている腸の部分は食べられないので、ナイフで立てに沿って切り込みを入れて中の肉をナイフとフォークで削 ぎながら食べます。これ以外はマスタードが付いていないので、意外と本場ではソーセージにマスタードというのは少ないのかも知れませんね。

 ちなみに単品で注文すると、この様な感じです。





 鶏肉と木の子のソーセージ

 キノコが練り込まれたソーセージです。豚肉の中にしっとりとしたキノコの感触があり、それを噛み締めるとその旨味が出てきて豚肉の油っぽさを軽減していて軽めの印象がありました。



 鶏肉とチーズのソーセージ ~バジルの香り~

 とろけるようなチーズにバジルを練り込んだもので、女性に人気だそうです。確かにピザの具のような感覚もありますので、女性には好まれるのかも知れません。


 鶏肉と九ネギのソーセージ

 九条葱と合鴨を練り込んだソーセージです。付いているポン酢を付けて食べるという和風なソーセージで、ラインナップの中では一番さっぱりとしています。噛み締めると葱の香りが楽しめて、不思議な感覚に捕らわれます。


 軟骨入りペッパーソーセージ

 コリコリとした軟骨の食感と黒胡椒の辛さで仕上げられたソーセージです。柔らかな豚肉の間に軟骨の食感が楽しめ、黒胡椒がそこに辛さでインパクトを与えています。


 メルゲース

 羊肉を使ったソーセージだそうです。色合いも少し浅黒い。羊の独特な香りと個性のある香辛料で味が付られています。羊肉の印象が強いので、これは好みが分かれると思います。少しパサ付いた触感なので、ソーセージの感覚とは少し離れている印象があります。



 チューリンガーソーセージ

 チューリンガーとはチューリンゲン地方を指すとの事で、調べてみると焼きソーセージの大御所であるそうな。残念ながら注文はできなかったので、味を紹介することはできないが、調べた限りでは、細長く香辛料の効いたソーセージだそうな。




 パスタ類諸々。


 雲丹とバジルのトマトクリームパスタ。

 自家製ベーコンのローマ風カルボナーラ。

 わたりがにのアラビアータ。

 ペンネリガーテ。

 かなりの種類があるので個別の評価は割愛させていただくが、見た目にも楽しく、味もまた同様である。一様に濃い目の味付けがされているように感じられ、 もしかするとパスタ類すらもビールに合わせているのかも知れない。一例を出すと、わたりがにのアラビアータなどは、チョリソーに比肩し得るほどに辛さがあり、ビールで押し流さねば噎せるほどである。




 ごはん類

 自家製焼豚のやみつき焼飯。

 シェフのおすすめリゾット。

 パスタだけではなく、御飯物に関しても幾つかあって死角がない。この清々しいまでの炭水化物の連続。飲食量に自信のある方々でも満足なさるに違いない。 ちなみに店の傾向なのか、御飯物も他の店と比較すると味付けが濃く感じられた。焼飯はパラパラに仕上げられており、リゾットもトマトをベースとした味をし ている。




 アマゴと竹の子の燻製。

 燻製専門店と比較するのは宜しくないが、燻製の香りと味はしっかりと付いており、酒の肴としては優秀である。思いの外、アマゴに水分があり驚いたが、これも自家製なのだろう。柔らかな感触に、薫る木の香りはビールが進みます。




 牛肉のグーラッシュ。

 グーラュシュとは、大ハンガリー圏の人々が、時間をかけて自宅で昼食をとる手間を省くため、外へ釜を作り大鍋で作られた釜煮のグヤーシュが起源だそうです。戦時中の移動部隊の食事にもなっていたらしい。確かに味も濃く、カロリーも高そうなので納得できる。分類上はシチューとのことだが、こちらの一品に関 して言えば、煮込んだ肉を盛り付けたように感じられる。御飯の上に乗せて食べたい……





 ビールなど。

 これ以外にも続々とラインナップが増えているようです。ダイニングでこれほどビールの種類が充実しているのは、あまり見かけませんね。色々と試してみた くなりますが、外国のビールは日本ものより飲みやすいにもかかわらず、アルコール度数が高いというものが良くあります。普通にアルコール度数が倍程度のものも見かけるので注意が必要です。





 クローネンベルク パウラーナ。



 クローネンベルクは女性受けしそうな一本で、レモン果汁が入っているだけでなく、なにをどうしたのかと驚く程にフルーティーです。逆に酒好きには合わないかも知れません。

 パウラーナはドイツで一番のシェアとのことで、柑橘類のような酸味と甘さ後味に残ります。しかし、これは他と違って量が少し多いので注文する際は注意が必要です。




 パウラーナ ドゥンケル。

 本場で言うところのドゥンケルヴァイツェンなのでしょう。スタウトに近い風味と味で、日本ではあまり有名ではありませんね。自分は麦を焙煎したものは好みなので良く飲みますが、ビールが得意ではない方は避けたほうが良いかも知れません。





 サリトス

 自分の一押しです。

 ドイツビールにテキーラを混ぜた上で、ライム果汁を加えた一本です。口に含むと、最初はライムの酸味が訪れ、嚥下した後にはテキーラの風味が僅かに後を 引きます。飲みやすく、ビールが苦手な方にも非常に勧めやすい。寧ろ、酒にネガティブなイメージを持たせないようにする為に、飲酒可能な年齢の方々には、 最初はこの様な一本を飲んで欲しいと思う。





 バスペールエールとカールスバーグ。



 バスペールエールは琥珀色をしていますが、味に個性がある為に好みが分かれるかも知れません。癖がないという話もありますが、普通にコクがあるので意外性がある。製法は良く分からないが、ドゥンケルに足を踏み入れている程には複雑な味である。

 カールスバーグは、海外のビールに多い個性控えめな印象がある。何も考えずにガバガバと飲むようなビールなのかも知れない。スーパードライの喉越し重視にも思えるが、風味は甘く、味は辛口で下が僅かに痺れる様な気がする。





 ベックス。

 ドイツビールの中でも輸出量が一番だそうだが、日本ではレーベンブロイが幅を利かしているので皆さんの印象には残っていないかも知れない。僅かな苦みに 軽やかな飲み口……印象のない正にビールといった印象を受ける。私見で言わせて貰うならば、レーベンブロイに負けるのは宿命のように思える。





 モンゴゾ バナナ。

 フレーバーなどの仄かな香りと甘みではなく、本当にバナナが前面に出ている。ちなみに「モンゴゾ」とはガーナの現地語で乾杯という意味だそうな。

 苦みが皆無に近く、それでいてバナナのフルーツの甘みがあります。ビールの感覚も残しているので飲みごたえがあり、ジュースのような扱いにはなりません。ビール嫌いの方でも確実に飲めるであろう一本と言えます。





 レーベンブロイとカステッロ・リゼルヴァロッサ。



 ドイツの本気、レーベンブロイは言わずと知れたドイツを代表したビールです。「レーベン」が獅子を意味し、「ブロイ」が醸造所という意味です。正に王者 と言えます。ちなみに国内ではアサヒがライセンス生産しているものと、輸入されているものがあり、前者はアサヒの泡へのこだわりが前面に出ており、スー バードライに近い。ちなみにこれは前者のものです。ちなみに輸入品の缶は青を基調にしていて見た目にも美しく、ドイツビールの基本とも言える要素を備えて いる。少し香草の気配が窺えた。

そして、カステッロ・リゼルヴァロッサは、ドゥンケルのような風味に近いが、少し焦がしたカラメルのような甘みがあり、最初に甘みがきて後に甘さを含んだ 焦げ付いた苦みが訪れます。水っぽい外国産のビールが多いなかでは、かなり重めの印象を持ちましたが、自分としてはお勧めできる一本です。





 グリューワイン。

 ドイツを中心とした西洋圏で冬に飲まれる赤ワインと香辛料などを温めて作る飲み物。香辛料と言っても柑橘類の皮やシナモンであり、砂糖も入っているの で、それなりに甘いです。そして、身体が温まるので、日本で言うところの甘酒のポジションなのでしょう。当然ながら冬季限定です。




 デザート類。

 レモンケーキ。

 ドイツママのケーキ  アイアーリカークーベン。

 アプフェル シュトルーデルクーヘン。



 デザートは取り立てて特筆すべき要素を持ち合わせていないが、シュトルーデルクーヘンは彼のちょび髭伍長閣下の大好物だったらしく、初めてでもあったの で注文してみました。獄中時代に差し入れの肉類は部下に全て渡していたそうですが、これだけは自分が口にしていたそうな。





 メニュー。

 勿論、サラダもありました。注文はしませんでしたが。肉の日ですから。メニューは、それなりの頻度で変化するようです。気になるものは早く注文しないと、次に巡り合うのは何時になるか分りません。






 まとめ

 これ程に肉を腹に詰め込んだ日は、人生で初めてのことであった。自分が腸詰めになった気分ですらあったが、ビールという飲み物は人を陽気にさせるという ことを再認識させてくれた。暖かな雰囲気を演出された店内に、優しげな店長。そして、店の規模に比して店員の数が多く、回転も比較的早いのであまり待たさ れるということもありません。

 みんなで楽しく酒を飲んで陽気になろうと思える料理店です。

 初めて一緒に飲みに行く相手などを誘うと、会話の糸口を料理と雰囲気が補ってくれる。ビールやソーセージの種類などだけでも十分に場を繋ぐことができることは間違いありません。

 

 

 

 

 

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