看板。
かなり小さいので見つけるのが一苦労です。自分も最近までは気付かなかったくらいで、初めて看板を見たときもトンカツ屋なのかと誤解しました。守山駅から歩いて一分という好条件の立地なので凄く行きやすいです。
お店の外観。
正直に言うと入る時は少し緊張しました。入り易い雰囲気が一切ない上に、小さな看板だけなので、きっと大将が“でやんでぃ”みたいな頑固親父な感じなの かと戦々恐々でした。実際は、大将は気さくな方で、初めて入った日も、かなり喋りました。付近の客とも和気藹々として、私が今まで訪れた居酒屋の中では一 番、雰囲気が良いお店です。
店内の様子。
暗い写真が多くて申し訳ない。他の客がいるのでフラッシュを派手に焚くのは憚られる上に、あまりいいアングルを撮ろうとする迷惑になるので。ちなみに冬場は河豚がお勧めで、河豚コースなどの張り紙があったりしました。ラストオーダーは二十三時です。少し早いですね。
メニューです。
変わったものが多く、気になったものを手当たり次第に頼ませていただきました。クジラハツとかオバケとかさわらのたたき……チャンジャオムレツにクリー ムチーズの味噌漬……個性が爆発しています。味を考えると値段設定も安めで、量もあります。凄く利用しやすいお店です。
御酒のメニュー。
これは一部だけですが、御酒はそんなに種類がありません。でも、かぼすチューハイとか気になるものもあります。何より、黒霧島のロックが四百円というの は安い。他なら六百円とか取りますし。日本酒も数は少ないですか厳選されたモノばかりであり、料理に合うものが置かれています。自己主張が激しくなく、料
理の味を邪魔しないものや、刺身の味を引き立てる淡麗辛口のものなど、秀逸なものばかりで、料理と合わせてという事を重視しているのでしょうね。
ミノのから揚げ。
珍しい一品です。こりこりしていて美味しく、レモンを絞って食べると鶏のから揚げの様な脂っこい感じがあまりせず、女性にも人気があるんじゃないでしょ うか? ホルモンですし。しかし、これ、凄まじく歯に挟まる。自分はもう大惨事でした。これを食べている時間よりも、歯に挟まったものを取っている時間の
方が長かった。大将にそう言うと、そりゃすきっ歯なんやろう、と笑われました。歯は大事にしないといけないですね。
砂ずりバター焼き。
焼き鳥では定番?な砂ずりですが、バター焼きというのは珍しいと思います。これもレモンを絞って食べるのですが、日本酒よりもビールでぐいぐいと生きた くなる一品で、しかも四百円というコストパフォーマンスに優れています。この写真を見て戴ければわかると思いますが、ここの店は出来上がりを本当に直ぐに 出してくれるので、あったかい品は湯気が昇っています。
クジラの尾身。
尾身と 読みます。自分も注文する時、 凄く悩みました。……おみ~? これは個性的な食感や味が多い鯨の部位にあっては、牛に近い気がしました。口に入れると溶け始めて、魚の脂が滲み出すわけ
でして、どちらかと言うと硬い食感の多い鯨の部位のなかでは異端児な感じですね。冷凍している事もあると思いますが、溶ける感覚を楽しめる一品です。
クジラハツ。
ハツ……つまりは心臓です。これは何と言いましょうか。生臭さは牛レバーほどではなく、少し自己主張が少ない生モノです。何故か心臓を食べると思うとク トゥルー神話の背徳的で冒涜的な感じの巨大魚類を想像してしまうのですが、レバーなどの生臭いものが食べられない方はこれで慣れていけば食べれる様になる かもしれません。
牛肉の炙り。
見てくださいよ、この赤身。テレビで放送している高いお肉の赤身みたいです。葱や玉ねぎ、そして紅葉おろしという組み合わせは、さっぱりしていて牛肉の 脂のしつこさを感じさせません。これも焼酎や日本酒に合うのですが、辛口の日本酒がベストだと思います。ここの店は、さっぱりとしたものが多く、ついつい 食べ過ぎてしまいますね。
クジラオバケ。
オバケ……塩漬の尾羽毛を薄く切って熱湯を駆けて、冷水でさらしたもので、酢みそで食べます。大将にオバケって何と聞くと、“脱脂した何とかで、あんまり美味しくないで”とぶっちゃけられました。でも、そんなことはなく、少なくとも私の中では、コンニャクに酢味噌を掛けるよりかは納得できます。こりこり とぷりぷりが合わさった様な食感は十分に楽しめます。
貝柱の炙り。
歯ごたえのあるホタテの貝柱の炙りです。塩で焼かれた上にレモンを垂らしで食べる訳ですが、これも日本酒に合います。凄まじいくらいの弾力性で驚きまし たが、近ごろの若者は柔らかいものしか食べないと言われているので丁度良い感じでした。まぁ、これもかなり歯に挟まるんですが。自分の歯が心配になってきます。
紅生姜の天婦羅。
これも珍しい一品です。鮮やかな色合いですが、噛むとサクッとした感触の中に、生姜の爽やかな肉汁が溢れ出て、新鮮な味わいがあります。これはビールのお供に最適ですね。思いがけない組み合わせですが、一度食べると気に入られると思います。おっさんのつまみだね。
さわらのたたき。
かつおは良く見ますが、さわらでたたきというのは珍しいと思います。淡白な味わいで、これも牛肉の炙りと同じく、葱と玉ねぎ、紅葉おろしという組み合わせてで食べる訳ですが、淡白である事も相まって日本酒の辛口が合います。焦げ目が堪らなく杯を進めますね。
いわしの梅肉揚げ。
いわしにシソと梅肉を付けて揚げたものです。シソはあまり好きではないのですが、これは梅肉との組み合わせもあってシソが前面に出てこないので、私は大 丈夫でした。ちなみにこれは二匹分。一匹三百円です。梅肉をいわしの揚げ物に付けるというものは良くありますが、付けてから揚げるというのは少ないです ね。いわしに直接梅肉が付いているので、美味しさ倍増です。
赤貝の煮付け。
煮付けは良く見ますが、赤貝のものはあまり見ないので頼んでみました。貝の煮付けですが、変な苦みの部分がある(まぁ、それが美味しいのですが)ことも ないので、食べやすいと感じました。これはお店で漬けているそうな。家の冷蔵庫にも常備しておきたいですね。これは、絶対御飯に合う。
チャンジャ。
私の大好きなチャンジャです。私が食べてきたチャンジャのなかでも断トツに弾力性があり、コリコリしていて歯応えを楽しめます。しかもかなり辛いので、 この小鉢一つでビール一杯を飲んでしまいました。まず最初にこれを頼むのが正義です。これとビールを頼んで、それを楽しみながらメニューをみて次の品を選 ぶのが賢いかと。
チャンジャオムレツ。
はい、神が降臨なさいました。これは大将が考えられた一品で、最初は個人的に作って食べていたそうですが、家族にこれは店で出したら売れると言われてメ ニューに昇格したという経緯があるそうです。これが絶品で、チャンジャの辛みと卵のとろりとした感触が合い、チャンジャの弾力性も火を通した為か、抑えら
れていて食べやすいです。でも、かなりお腹が膨れる一品なので、色んな種類のモノを食べたいときは頼むのは難しいかも知れません。辛いのでビールが進むの ですが、私は黒霧島がベストだと思いました。
クリームチーズの味噌漬け。
最早、想像も付かない世界でした。周囲の客は良く頼まれており、私はそれを御馳走させていただきました。クリームチーズに味噌の風味が付いた一品で、ビールに合います。これに関しては一度、食べてみてください。詳しくは説明できないです。
つきだしと辛口日本酒。
全体的に料理と合う酒だけを置いておられるのか、基本的に合わないものはなかったです。隣の客と話していたのですが、昔は酒の種類も多かったらしく、今 残っているのは厳選されたものだけだと話しておられましたが、正にその通りでした。何回も近くの客に御酒を御馳走していただき恐縮な気がしましたが、若者
が酒の席で目上の者の話を聞き、御馳走されるのは“義務”なわけです。義務なら仕方ないです。
アジのタタキ
みょうがや玉ねぎが大量に乗せられている為、凄まじいボリュームがあります。これ一つで腹がかなり満たされること間違いなしの一品で、一人で訪れた時に は絶対に食べられない気がします。色んな種類を食べられなくなりますね。実は、私、みょうがってあまり好きじゃないのですが、アジのタタキには何故か合い ます。野菜不足の身には嬉しい限りです。
鴨の葱焼き
鴨が葱を背負っているとはまさにこのことですね。調理済みですが。鴨は火を通すと硬めのお肉になるので、歯応えがあります。そこに葱の食感が入ると絶妙 なわけですね。ちなみに味付けは醤油と味醂?だったか……かなり単純な味付けに見えたので、大将の腕がもろに試されるのではと思えました。そう言えば、鴨
肉って複雑な調理が必要になる料理には余り使われていないですよね。簡単な味付けのほうが、本来の味が生きるという事なのか?
鯨のベーコン
魚類(いや、正確には哺乳類らしいが)もベーコンにしてしまえば、豚肉のベーコンに近づくのだなと驚きでした。魚類特有の重さを感じさせない脂が口元に広がり、旨みを感じさせますが、日本酒のお猪口では流せないほどに”濃さ”を感じさせます。噛めば噛むほどに旨みが溢れます。
刺身盛り合わせ
鯨のラインナップが豊富すぎて目を奪われるのですが、他の魚類も存在します。変化球はなく、一般的な種類のものがおかれています。たまに季節に合わせた太刀魚や秋刀魚なども見かけますね。
海産物が多いですね。
滋賀は海に面していないので魚介類に弱いのですが、ここは積極的に仕入れている感じがします。仕入れる種類を固定している料理屋が多いですが、ここは違います。ちなみに最後の写真は滋賀名産の生物兵器”鮒寿司”です。いやぁ、なんとも言えない匂いが店内に……
ふぐコース
これでもかと言わんばかりに量が出てきます。一人一匹潰して出してくれるとのことですが、考えてみればかなりの量です。しかも、ふぐはほとんどの部位が食べられるので解体しても量があまり減りません。コラーゲン満載の肌に近い部分を鍋で楽しみ、から揚げで楽しみ、刺身で楽しみ、焼いて楽しみ、雑炊で楽しむ。ふぐ三昧です。皆さんプルプルとした口周りが嫌だからって全部、自分に押し付けないでくださいよぅ。五匹のふぐとキスしました。
まとめ
大将が最初、渡哲也に見えたのですが、気さくな方で新参の私にも声を掛けていただきました。入りにくいですが、一度、入ってみれば安らげる料理屋といっ た雰囲気で、料理や御酒以外の面でも楽しめます。こういった店は少ないと思いますので、まさに地域密着型と言った雰囲気ですが、ふらりと旅人が訪れても温
かく迎えてくれそうな気がしました。彦根や東近江で観光した後に行ったりすると良いかも知れませんね。