第一話 戦車のある登校風景
いつも通りの登校風景。
男子生徒達が下品なトークをしながら前を歩いてゆき、女子生徒達も甲高い声で笑いあいながら、前方を目指す。中には男女で中良く手を繋いで歩いているものも少なからずいる。要するにバカップルな訳だが、頬を赤らめるくらいなら手なんて繋ぐなと思わずにはいられない。
――地球温暖化は、バカップル共のせいに違いない……
当然の事だが、バカップルがいちゃいちゃしたところで南極の氷には全く影響はない。
別に彼女が欲しいと思っている訳ではないが、目の前でいちゃつかれると鬱陶しい……。
だが、口に出すと羨ましがっていると思われるので口には出さない。
「お~い、刀樹~」
後ろから、いつも通りのタイミングで、軽い調子の声が飛んでくる。
相手の顔を確認せずに、持っていた鞄をフルスイング。
他の学生が持っている鞄と違い、サラリーマンが持っているような昔ながらの皮製学生鞄。しかも、相手は走ってきているので威力はさらに上がる。
「ひでぶっ!」
予想通りの奴が予想通りに倒れる。
皮製学生鞄の中には、たいしたものが入っているわけではないので、そう痛くは無かったはずだ。ちなみに教科書や筆記用具などは、当然学校に置きっぱなしである。
倒れていた軽い声の主は、どこかのアニメの主人公のような動作で口元を擦る。と言っても血は出ていない。
「いい
「……飽きた」
余りに、いつも通りなので、学生鞄の汚れを払うと、再び歩き出す。
「ひどっ! いつも殴っておいてそれはないにゃ!」
これまた相変わらずの軽薄な笑みを浮かべて、馴れ馴れしく肩を組んでくる。
この鬱陶しい男の名前は、大城・影虎。
一応、友人ではあるが、ここ一番で信用できない男で、なかなか惚れっぽい性格をしており、一日一回は女性を口説いている。まぁ、この独特の口調のせいで彼女いない歴と年齢がイコールで繋がっているが・・・・。
「まったく……。オマエは変わった奴だな」
「変わってるのは、刀樹の方にゃ。今どき、そんな古臭い格好してるのはお前くらいにゃ。あ、そうだにゃ~、髪を染めたらどうだにゃ? なんなら俺と同じ色にするにゃ?」
影虎は、自分の金髪を指さす。
髪を染めるのは校則違反なのだが,影虎だけでなく他の生徒なども染めているので、問題になる事はない。何せ通っている学園が、生徒数三百二十万人のマンモス学校なのだから教士も一々気にしていられない。
「金髪は外人だけで十分だろうが。大体、俺はチャラチャラした奴は嫌いなんだよ」
「俺も同感だにゃ」
自分の金髪やピアスの事を棚に上げ、うんうんと、と頷く影虎。
アホすぎて影虎には嫌味が通じなかった。
いくら学校が幼稚園からのエスカレーター式だとはいえ、ここまで馬鹿だと留年しそうな気がするが、何故か留年しないらしい。噂では、この学園都市の七不思議の一つになっているとかなっていないとか……
そうこうしている内に校門の前までやって来た。
二人は改めて、巨大な校門を見上げる。
凱旋門……・に見えなくも無い巨大な建造物。
校門がこれだけデカイのだから、刀樹たちが通う学校の大きさがどれだけ桁違いなのか容易に想像が付く。大都市を丸々一つ使った学園なので、当然インフラ 設備や交通機関、警察機関など、都市の運営に多くの人材が必要だが、それすらも生徒が運営している。大人は教育の為の先生だけという徹底ぶりだ。
それがこの、近江学園都市だ。
実際は、都市というレベルではなく、完全に独立した形となっており、一つの国家ともいえなくもない。都市が運営している敷地も広大で、間違いなく世界最大の教育機関だろう。
「大きいは正義ってかよ……」
キィィィィィィィィィィィィッッッ……
その時、刀樹たちの上空を爆音が通り過ぎる。
Su-33 フランカー。
第二次世界大戦で独逸第三帝国から逃れてきた技術者を中心に立ち上げられたメーカーによって設計・製造された戦闘機で、多数の国家や民間軍事会社が使用している。そして、この近江学園都市では航空戦力や教導機として百機近くが配備されている。
これも、この学園都市の生徒にとってはいつもの光景だ。
「うるさいにゃ~」
そんな、影虎の声を無視するかのように、後ろからガタガタと鉄が擦れるような音が、規則正しく近づいてくる。
さっと後ろを見る。
特殊車輌だ。
車だ。うん、車だ。
砲塔と
見なかった事にした。ポカンとアホ面下げて見ていると、ろくな事にならないのは目に見えているからだ。このまま、普通に歩いていれば他の生徒と見分けは付かないだろう。
巨大な気配を後ろに感じつつも、黙々と歩いてゆく。
「おっ! 生徒会長の登場にゃ。可愛いにゃ~、おい刀樹も見るにゃ」
空気読めよ!
とりあえず影虎の頭に拳を振り下ろした。
「痛いにゃ! 頭蓋骨陥没にゃ~」
「にゃ~にゃ~うるせぇんだよ! 猫かオマエは!」
「いや影〈虎〉にゃ」
「虎は猫科だろうが!」
がるる……と唸る影虎の腹部に肘打ちをし黙らせると、そのまま校門に向かって再び歩き出す。ちなみに学生鞄を持っている手の反対の手は、しっかりと影虎 の襟首を掴んでいる。だるいが、影虎が授業に遅れると、連帯責任で自分までとばっちりを受けるので、仕方なく引きずってゆく。教士や教官も、椅子に座って さえいれば文句は言わないだろう。
しかし、面倒は終わらない。
「刀樹く~ん、私と一緒に登校しな~い?」
戦車が、刀樹の横に並んだ瞬間に急停止し、キューポラから顔を出していた制服姿の少女が、体を乗り出して刀樹の名前を呼ぶ。影虎と二人でバカ騒ぎを起こしたので目だってしまったのだろう。
深雪・A・東郷。
一応は知り合いだが、あまり関りたくない人間の部類に入る少女だ。西は布哇諸島から東はウラル山脈までを国土とする大日本皇国連邦の巨大軍閥の一人娘である。逆鱗に触れると、正規軍でも消し炭になりかねないので、国家ですら安易に意見できない。
まさに歩く国際問題。政府内では密かに”将軍様”と呼ばれているが、本人はそれを知らない。知ったら喜ぶだろうが。
だが、刀樹にはそんなことはどうでもよかった。
「俺の知り合いに戦車で登校する奴はいねぇよ!」
と、戦車のキャタピラ付近に取り付けられていた装甲を蹴る。痛かった……
「ダメかなぁ? マイパンツァー」
「マイカーみてぇなノリかよ」
深雪のような大軍閥のお嬢様にとっては当然の事かもしれないが、普通の人間にとっては戦車で登校などあり得ない。しかも、深雪が乗っている九〇式戦車の後方には、二台の同型戦車と対空車輌である八七式自走高射機関砲が一列になってアイドリング状態で停止している。
九〇式戦車と八七式自走高射機関砲は、大日本皇国連邦陸軍の正式採用兵器だ。どちらも世界随一の性能を持っているが、一台で十億する超高額兵器でもある。
そんな兵器で登校する深雪を止めようとする者いはいない。
大日本皇国連邦最大の軍閥にして、世界有数の兵器メーカーでもある東郷家の一人娘。そして、日本海海戦で日本に奇跡の大勝利をもたらした東郷・平八郎提 督の血統と、ロシア帝国ロマノフ朝の第四皇女であったアナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァの血を引く有名人でもあった。
そんな彼女を止められるものなどこの国にはいないのだ。
いや、いたとしても目の前の砲が火を噴けば黙らざる終えないだろう。
「まぁ、いい……。俺も乗せろ。ついさっき荷物が増えて困ったんだ」
刀樹は、引きずっていた影虎を見せる。
「いいよ~。砲塔の上なら」
深雪の許しを得たので、早速戦車の車体に飛び乗る。流石に影虎を持ったまま飛び乗る事はできないので、後から襟首を掴んで引っ張り上げる。影虎の首が締まって、ぐえっ、という呻き声が聞こえたが無視した。
深雪は刀樹と影虎が戦車の砲塔によじ登ったのを確認する。
「Panzer・Vor!(戦車隊前へ!)」
そして手を掲げて振り下ろすと、何故か独逸語で発進の指令を出す。
それを合図に三両の戦車と一両の対空車輌は排気音を轟かせながら、鉄の軋む音を立て動き出す。ゆっくりと前進する戦車隊の前は登校する生徒達がいるが、戦車の存在に気付いた瞬間、「ああ、またか~」「九〇式萌え~」という声を上げて道を開ける。
どけっ、愚民ども~……と、叫んでみたくなるシチュエーションだが、それでは深雪と同じ目で見られてしまうので、黙っていた。実際は、この戦車に乗った時点で、もう同じ目で見られているので遅い気がするが、そこは考えないようにした。
戦車隊は、一列のまま、巨大な校門を潜り抜ける。流石に東洋の凱旋門の異名を持つだけあって九〇式戦車が、5,6台並んで通る事ができるほど大きい。
門を潜り抜けたすぐ横には、八九式小銃をスイングベルトで肩に掛けた警備員立っている。止められるのではないか? と思ったが、深雪が「ご苦労様です」 と敬礼をすると、直立不動の体勢を取って完璧な敬礼を返してくる。当然、誰一人として戦車隊を止めようという者いはいない。
「誰か、この戦車を止めようという勇者はいねェのか……」
当然ではあるが、勇ましい返事は返ってこない。
まぁ、好きで戦車に立ちはだかる奴なんていないだろうが……。ていうか、深雪なら確実に轢き殺す。人間ハンバーグになること請け合いだ。
「勇者さんが120mm滑空砲弾を受け止められるなら戦ってもいいよ?」
「そんな奴いねェよ……」
たとえ警備員が戦車隊を止めようとしても、深雪なら120mm滑空砲をぶっ放して黙らせるに違いない。人間など発砲時の風圧だけで吹き飛ぶだろう。
「ん?……てことは、俺も風圧で飛んでいくんじゃねェか?」
刀樹は、砲塔の上に座っているので、主砲なんかぶっ放したらどうなることやら……。それくらいは、深雪も分かっているはず……たぶん……。
冷や汗を流している刀樹の方を、いつの間にか復活していた影虎が掴む。
「酷いにゃ! 刀樹は、俺と同じで彼女いない歴=年齢だと思っていたのにっ! 生徒会長と知り合いなんて! はっ! そうにゃ! これはモテ期にゃ! モテ期に違いないにゃ!」
「彼女なんかじゃねェよ。しかも、モテ期ってなんだよ? しかも、俺だって一応、副会長なんだから知ってて当然だろうが」
そう、刀樹は、近江学園都市の副会長。そして、深雪は生徒会長なのだ。ナンバー1とナンバー2だが、深雪の権限に比べると副会長など一般生徒と大差ない。ついでに影も薄い。いや、これは深雪が良くも悪くも有名すぎるせいでもあるからだ。
刀樹の、そんな思いを知ってか知らずか、華麗にスルーする影虎。
「モテ期を知らない! 仕方ない、俺が教えてやるにゃ! モテ期とは人生に三度訪れる意味も無くモテまくる時期のことにゃ」
わけわからん……。しかも、人生に三度って……。
刀樹のそんな思いを無視し、うだうだと長い解説を垂れ流す影虎。すぐに飽きたので深雪の方に顔を向ける。キューポラから上半身だけを出している深雪は、 車長用のヘッドフォンを付けているので、二人のバカ話は聞こえていないのか、じっと前だけを見ている。だが刀樹には、深雪がそれとなく周囲を警戒している のが分かった。
ユーラシア大陸の自治領のように盗賊や匪賊、武装集団などが潜んでいる、なんて事は無いので別にそこまでしなくてもいいのだが、小さい頃から軍人教育を受けてきた深雪は真面目に警戒を続ける。ふにゃふにゃした性格の割にこういうところはしっかりしていた。
そんな深雪を横目で見続ける。
風に揺れる長い黒髪。凛々しさを際立たせる口元。制服の隙間から覗く、透き通るような白い肌。そして、力強く前を見据える漆黒の瞳。
美しい……。
普通にそのような陳腐な言葉が出てしまうほどに、深雪は美しい。
刀樹はその思いを口に出さない。そのようなキザなマネはしないし、できない。そもそも、顔立ちを台無しにする程に破天荒なのだ。影虎に言わせれば刀樹はヘタレらしい。だか、刀樹自身はその事を気にしてはいない。そもそも、それを台無しにする程に破天荒なのだ。
「えっと……私の顔に何か付いてるかな?」
「いや何でもねぇ」
ヘッドフォンを首に下ろし、髪を掻き揚げる深雪から目を逸らす。
そこで、初めて鋭い視線に気付く。影虎……ではなく後ろの……二台目の九〇式戦車のキューポラから顔を出している女性。
クローディア・フォン・ヴィッテンブルグ。
深雪のよき理解者であり、親衛隊の隊長でもある女性。元EFU(欧州国家社会主義連合)陸軍の軍人で、現役時はエリートコースまっしぐらのガチガチ職業軍人らしく、今でも話し方や動きもキリキリしている。
「大尉さんか……」
刀樹は、まぁまぁ とジェスチャーをするが、そんな事はお構いなしと言わんばかりにワルサーP38のスライドを後退させる。お嬢様に手を出せば蜂の巣にすると言いたいのだろう。
殺る気だ、あの女。殺る気だ。
刀樹の顔から血の気が引く。深雪と影虎は、その様子を見て頭上に?マークを浮かべている。箱入り娘とバカ猫には殺気を感じるほどの感覚はないようだ。
深雪に言えば、後で直径9mmの風穴が体中にできること確実なのでチクることは出来ない。そして、となりにいる影虎は盾にもならない。
さぁ、どうしたものか……
この状況を切り抜ける方法を探すよりも先に校舎が見えてくる。
周囲にも生徒の数が増えてきたので、銃の使用はマズイと思ったのかゆっくりと下ろす。だが、ホルスターに戻す気配はなく、隙さえあれば殺る、というオーラがビンビン伝わってくる。
朝から極度の緊張を強いられた刀樹は、深雪いわく口から魂が抜けたような表情であったらしい……
「クローゼは煙草の吸い過ぎで早死しちゃうよ……」
レトロな雰囲気を漂わせている校舎前の景観をブチ壊すように停車している九〇式戦車から降りた深雪は、いつの間にか横に並んでいるクローゼを見る。
「ヤニが切れると仕事に手中できない。それに……護衛が新人みたいにガチガチしてると逆に狙われかねんぞ?」
ポイッと戦車の砲門の中に吸殻を投げ入れるクローゼ。それを見た深雪は悲鳴を上げる。
「ああっ! 戦車の主砲を灰皿代わりにするなんて……酷いよぅ!」
と戦車に駆け出す。
奇声を上げて戦車に取り付く深雪を、満足そうに眺め、クローゼは刀樹に近づく。
「何か用かよ? ナチ女」
わざと深雪を遠ざけたクローゼを目線だけで追いかける。
「そう邪険にするな。私はお前に期待しているんだぞ?」
ホルスターからワルサーP38を抜き取りながら言われても、全く説得力がない。このナチ女は銃を抜くのが癖になっているのかもしれない……
「まぁ、深雪を泣かせたら、私はお前を蜂の巣にしてやるが」
自分は泣かせるくせに……
クローゼは、刀樹に銃口を向ける。だが刀樹は動かない。無口で睨みあう。
刀樹が信頼に値する人間か見極めているのだろう。刀樹もそれを承知で動かない。
「ふん……」
しばらくすると、観念したのか、クローゼはつまらなそうに視線と銃口を逸らす。
度胸はあるようだな……と、新しい煙草を取り出し銜える。
「お前がどこで何をしてきたか問う気はないが……お前の過去に深雪を巻き込むなよ?」
つまらなそうな顔で空を見上げる。
刀樹の背に冷たいものが走る。
クローゼは、刀樹の過去を調べたのかもしれない。刀樹が過去を知られるはあってはならない。刀樹の手が静かに学生服の懐に伸びる。そこに隠されているの は、最近の相棒でもあるベレッタM92拳銃だ。しかし、ここで銃撃戦をしても結果は同じなのだ。やむなく刀樹はクローゼに話を合わせる。
「別に過去を誰かに押し付けるほど俺は腐ってねェつもりだ。そっちこそクソ軍人時代に色々やってたらしいじゃないか?」
「ああ、だからお前はどことなく私に似ている気がしてな……。他人事に思えんのだ」
「けっ、一緒にすんじゃねぇよ……」
何も言わずに刀樹は、戦車の砲身を掃除している深雪を眺める。
「私の事はクローゼと呼べ、ナチ女じゃ世間体が悪い」
「なら俺は刀樹でいいぞ」
手を差し出すと、クローゼは右手を上げようとする。その後、直ぐに思い直したように刀樹の手を握る。軍人だっただけあって敬礼の癖は抜けていないのだろう。
クローゼは、ふん と鼻を鳴らすと銃口を銜えていた煙草の先端に向ける。
そして引き金を引く。
銃口からシュボッ と、火が出た。
「ライターかよ……」
「ん? どうした?」
ニヤニヤしながら絶賛驚愕中の刀樹を眺めるクローゼ。
どうやら分かっていて銃……ライターを振り回していたらしい。年長者だけあってうまく刀樹を騙したが、さすが陰湿ナチ女だな と刀樹も負けじと反撃する。
「お前に万が一の事があれば、深雪が悲しむからな。別に、お前の空気より軽い命を心配した訳ではないぞ」
考え方によってはツンデレと受け取れる言葉を放つクローゼ。
俺の命は水素並みに軽いらしい。まぁ。今まで胸を張って歩けるような人生じゃなかったしな。
「もし、深雪が俺の事を好きになったらどうするンだ?」
「むっ、それは難しい質問だな。うむ、護衛としては感知しないが、プライベートではその限りではない」
クローゼは、ギロリと刀樹を見据える。
だが、刀樹はそんな事では怯まない。むしろクローゼをからかうのが楽しくなってきた。
「じゃあ、俺が深雪を押し倒したらどうするンだよ?」
「切り落とす」
その言葉を聞いて思わず内股になる。
一体、ナニを切り落とす気だよ……。
そんな刀樹の心の叫びなど露知らず、深雪は刀樹の近くまで駆けてくる。砲身の掃除は終わったようだ。クローゼは陰のように深雪の後ろに付く。
「どうしたの? 内股で?」
「気にする事はない深雪、トイレにでも行きたいのだろう」
それを聞いて納得したのか、我慢すると体に悪いですよ、と言いたげな目線を刀樹に向けつつ、深雪はクローゼを引きつれ校舎内に入っていく。
「あの女は絶対にやる、間違いなねェ。我が主砲が一瞬でスライスチーズだ」
内股のまま刀樹は深く頷いた。
こうして刀樹は、深雪の護衛の恐ろしさの一端を垣間見たのだった。